システム管理者は時間外でも対処を要求されることがあります。
むかし、むかし、ちょっと昔。と言っても十年くらい昔。それはある日の朝の出勤、通勤電車の中での出来事でした。
一通のメールが入ります。
そのメールには…
決して快適とは言えない通勤電車の社内、つり革に捕まりながら受信したメールを開いて見ると、抜き差しならない内容が記されていた。
「大変です、どうやら私の担当のシステムが停止しているみたいなんですよ。何か前兆ありませんでしたか?」
担当者から悲痛なメールでの連絡。うーん、これは一大事。おおかた早起きで早朝に出勤するユーザの一人からこういう連絡を受け取ったんだろうな…、大変だな。
システムが停止…というのは前兆はなかったけども…、なんとなくWindowsサービスが停止しているような気がしていた。
というのも、バックアップジョブのために、サービス停止⇒システムのデータバックアップ⇒サービス再開(起動)、という流れを自動的に実施していたのだが、昔に何回かこの最後のサービス再開(起動)を実行するためのコマンド実行が上手く動作せずコケていたことがある。どうも同じ症状に思えた。
続けて次の文章が。
「何とか始業前に起動できればいいんですけど、私のほうは遅延で始業時間に間に合いそうにありません…。」
マーフィーの法則ってやつね、自分が居ないといけないときに限って交通遅延ってやつですか。
どうやら状況は、
・障害発生で社内システムが停止らしい。
・始業前(朝礼くらいには)システムを始動しないといけないらしい。
・担当者は間に合わないらしい。
・昔の体験を踏まえると、サービスを手動で起動してやればよさそう
・サービスの起動はサーバ画面を開いて、services.mscから起動をクリックすれば起動する(はず)
といったところ。
しかし、こちらも今は通勤電車の中、モバイルPCも持ち歩いてないし…、いやそもそもモバイルPC支給されてないからね、どうしよう。
どうしよう、と思っていた目の前に、いまエマージェンシーコールを受け取った会社支給のスマートフォンがあった。
「これ、もしかして何とかなるか?」
通勤電車の中で体を揺られながら、試してみることにした。
試してみるのは…
試してみるのは、最近導入したVPNコンセントレータにスマートフォンから接続できる設定。
確かこの先月入れてもらっていたな…と思い出していた。
先月に入れてもらったその時のこと。
設定を入れるにあたってネットワークの管理担当者からは、
「まだテスト段階ですからね、どれくらい使えるものだか全く想像もつかないですし、操作が…、というかVPN繋がっているかどうかという通信状態の把握が難しくて、再接続をどうやるかってのが煩雑なので、一般ユーザに展開はできないくらいの完成度なんですよね~。」
あ、でも、繋がるし、使えるのは使えるってことなんだよね。
って質問すると、ネットワーク管理担当者は
「フッ、使えますよ、ええ使えますとも。
しかし、そもそも、ですよ。
スマートフォンで、社内ネットワークに接続して、
何に使うんです?
使うもんなんてないじゃないですか(笑)」
みもふたもないな…。
「とりあえずつながるようにはなります。
で、何に使えるかはこれから考えるって感じですね。なにも無理に使わなくていいんですよ。もともとモバイルPCが社内LANに接続してインフラを利用するために導入したんですから。
スマーフォンはあくまでもおまけです。
ま、課題が多すぎてスマートフォンでは、まだまだ実用できるもんじゃあないっすよ。繋がりはしますけどね。」
自信満々な彼の様子からは全く逆の"何に使えるか自信ない"と受け取れる発言にあっけにとられながらも、その後ろには
エッヘン!
という擬音が見えた気がした。
そんな様子を意に介さず、
「で、テスト的に設定入れておきますか?どうします?」
と、言われていた、スマートフォンでのVPN接続設定。
頭の中でリフレインするセリフは
「何に使うんです?」
「使うもんなんてないじゃないですか(笑)」
使うもんなんてないじゃないですか(笑)か…。確かにその時はそう思ったものだ。
いや、これ、今こそ使いドコロなんじゃないか?と直感的に閃く。
これで社内ネットワークに接続すれば、リモートデスクトップアプリでサーバに繋がるんじゃ?と思って、やってみることにした。
※幸いにもリモートデスクトップアプリは事前にインストール済みだった。
始業の時間が迫る通勤電車の中、孤独な障害対処が始まった。