むかーし昔のことです。
その日は晴れて蒸し暑い夏に差し掛かろうかとしていた季節。
そんな金曜の夜、23:45にあの総務部長がやってきた。
⇒武勇伝:(1/2)終電間際に来る依頼あるある(?) - treedown’s Report
⇒武勇伝:(2/2)終電間際に来る依頼あるある(?) - treedown’s Report
ブユウ デンデンデデンデン、Let'sGo。
ん?突然ですが?
総務部長は開口一番、
「いまから固定資産の棚卸をしてください。」
?何をおっしゃっていますの?
「いや、ですから、固定資産の棚卸をしてください、と言ってるんです。」
あのぉ、私
"システム部門の社員"なんですけど。
総務部長の発言
「あなた、社内で一番固定資産に詳しいですよね?総務部の人間が言ってましたよ。固定資産の棚卸はやらなきゃいけなかったんですけど総務部のみんなは時間がなかったから全部できていないんですよ。だから固定資産に一番詳しいあなたに手伝ってもらわなければ締め切りの月曜日に間に合わない、と総務部のみなが言うんです。だからこうやってお願いに来たんです。固定資産の棚卸をこれからやってください。」
最初は冗談だと思っていた。だって時刻は忘れもしない、
「23:45」
あと15分で日が変わる。
こうして心の葛藤が始まる
えっと、詳しいからやれ、ってことを言っているように聞こえた。私の聞き間違いだろうか。それってなんかおかしくないだろうか?
いま、金曜日の23:45、これから固定資産をやるとなると確実に家に帰れない。はっきり言って部外者である私にそこまでする義理はあるのだろうか。
正直やる意味が分からない。
そもそもだ、
"総務部のみんなは時間がなかったから全部できていない"から、固定資産を知っている人を捕まえて「あんた時間あるだろう、棚卸やりなさい。」ってなんか話としてはとてもおかしいんじゃないか。
もう頭の中は「この話、おかしいんじゃないか?」しか浮かんでこない。
はっきり言って昔やっていたからといって、いま外されているこの職務をやらなきゃいけない理由が自分に見いだせない。
もう少し詳しく言うと、誰もやる人が居ないからと言う理由で二年目くらいからあれこれ棚卸を押し付けられた、という方が正しい、棚卸は固定資産番号を見て現物を確認、リストにチェックという地味な作業をひたすら繰り返すだけなのだが、広い社内に地方拠点で少人数でやるには困難を極めていたのは否めない。
そうだ!上司に断ってもらおう
でもそんな困難のあった固定資産管理を、「固定資産管理なんて誰にでもできるんだ。」という捨て台詞とともに職務分掌という区分けで仕事を持ち去ったのはそもそもソチラ。
もう関係者じゃなくなっている私には、これをやる意味が見いだせない。
最後の希望は上司に断ってもらう、と言う作戦だ。システム部門長に電話をしてもらい、夜中の作業と土曜日の作業に対する了解をもらうよう総務部長に促した。
深夜作業、土曜日に掛かるとなれば、昨今の残業代や休日出勤に厳しい会社の状況で、自部門の人員が労力を割くことに反対するはずだ。
これでシステム部門長である上司が「それはうちの部署の仕事じゃないだろう。」と突っぱねてくれれば、このまま私は終電で帰宅できる、というシナリオだ。
総務部長は電話をし、しばらく会話すると私に電話を渡してきた。
「システム部門長がお話しがあるそうですよ。」
電話を代わった私。
システム部門長は私の目論見を知ってか知らずからノー天気な声で開口一番こういった。
「協力してやってくださーい。」
と電話の向こうでは楽しそうな声が聞こえる。
こうして、早くも私のシナリオは崩壊することになった。
上司に断らせようとして失敗
そりゃあんたはもう18:00で退社してるんだからいいよね。家に帰っているんだかどっかに遊びに行ってんだか知らないが。
と毒づきたいところをグッと我慢、がまんだ。
我慢している私に追い打ちをかけるように、上司はこう付け加えた。
「総務部長にヤキニクでも奢らせればいいじゃん。」
"明日土曜日だからいいでしょ?"そういってるようにも聞こえた。
ナンテコッタ…。
こうして、終わらない週末が始まることになった。
こうして始まった週末
「あれ?何か人数が少なくない?」
私はふとつぶやいた。
見れば、総務部の部員AさんとB君が二人と経理部のD係長が一人。
「総務部長は?」
そもそもこの話を私にひっ被せた総務部長はどこに行ったのか、なんとなく気になった。
B君はうんざりした表情をしながら
「部長は、帰りましたよ。明日AM9:00にくるからそれまでに終わらせておくように、と言い残して。」
…。
本気か?
途中のAM5:00頃、総務部の部員Aさんと経理部のD係長の二人は、力尽きたのか誰に言うでもなく仮眠所で睡眠を取り始めた。残された私とB君はひたすらAM9:00の総務部長出社までに調査を全て終わらせるべく、口数が徐々に少なくなる中、眠気と戦いつつ、固定資産を調べ上げていった。
こうして、翌日土曜日
9:00に総務部長はやってきた。
疲れ切った表情のB君が
「調べ終わりました。あとはお任せします。」
チェックで満たされた固定資産のチェックリストを手渡して、後の処理を総務部長に引き渡そうとしていた。
やれやれだぜ。
これで解放される。
そう思っていた私をよそに、総務部長はB君に質問をし始める。
「これ、全部分かるのは誰なの?」
私と同様に一睡もせずにチェックリストを完成させたB君は
「総務Aさんと経理D係長でわかるんじゃないですかね?」
と、多少他人事のように発言する。
その発言に総務部長の表情は曇り、
「実際に固定資産の確認をしたのは誰なんだね?」
語気を荒げB君に詰め寄る。
B君はその勢いに押され、B君自身と私の二人で最終的に全部確認した、ということを白状してしまった。
しまった、それはいけない。
私が心の中で思った時にはもう遅かった。
総務部長は激高し始めた。
「キミたち二人しか分からないんじゃないか!これじゃあデータが完成しないじゃないか。」
案の定、いつものご都合主義が出てきた。結局このパターン…。
そもそもB君はAさんとD係長が睡魔に負けてしまい、睡眠を取ることの交換条件に、調査まではこちらで実施して、データ作成を睡眠を取ったAさんとD係長がやる、ということで話がまとまっていたらしい。
そんな取引を知らない総務部長は、怒っているかのような剣幕でB君にこう指示を下した。
「データが完成しないと帰らせるわけにはいかない。これからデータを作成してしっかり仕事を完了させてもらわないと。
無責任じゃないか!」
まるで、こちらが手抜きしていることを責めているような言いように呆れたが、
そもそも総務部長は何のために来たんだろうか。
ウンザリしたB君がせめて楽になるように、データ作成作業を半分分担することをB君に申し出、引き続き二人でデータ作成作業を始めることになった。
この時点で、稼働時間24時間が経過していた。
そして時間は経過する
時間は7時間経過し時刻は土曜16:00
データが一通り作成完了した私は総務部の部屋に赴き、B君とデータを突き合わせ、一つのファイルにする仕上げに入ろうとしていた。
総務部の扉をくぐり、部屋に入ったとたん、驚愕の光景が私の眼に飛び込んできた。