DebianがリリースしたDebian 13 Trixieで32ビットサポートを縮小に踏み切って、Raspberry Piにもその波がくるんじゃないかと心配になって調べてみたのでご報告です。
Debian 13 Trixie 32ビットサポートについて
Debian 13 Trixieが2025年8月9日にリリースし、事前にある程度話題にはなっていたものの、32ビットサポートの縮小について公式に説明がなされていました。
■Debian 13 trixie released
https://www.debian.org/News/2025/20250809
ここに32ビットサポートの説明が掲載されています。
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i386 is no longer supported as a regular architecture: there is no official kernel and no Debian installer for i386 systems. The i386 architecture is now only intended to be used on a 64-bit (amd64) CPU. Users running i386 systems should not upgrade to trixie. Instead, Debian recommends either reinstalling them as amd64, where possible, or retiring the hardware.
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i386 は標準アーキテクチャとしてサポートされなくなりました。i386 システム用の公式カーネルと Debian インストーラーはありません。i386 アーキテクチャは、現在 64 ビット (amd64) CPU でのみ使用されることを想定しておりますので、i386 システムをご利用のユーザーは trixie にアップグレードしないでください。Debian では、可能な限り amd64 として再インストールするか、ハードウェアを廃棄することを推奨しています。
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64ビットOSが動作するPCじゃないともうDebianはサポートされない記述が見て取れます。つまり32ビットOSしか動作しないPCではDebian 12 bookwormを最後にそのPCを諦めることになりそうです。あるいは32ビットOSサポートが継続する他のディストリビューションを選択するということです。
Raspberry Piはどうなる?
そこで気になったのはRaspberry Piです。
以前に調べた<RaspberryPi3は64ビットCPUで32ビットOSを動かす - treedown’s Report>このタイミングでは、32ビットOSしかRaspberry Pi OSが提供されていなかったのですが、あれから時は流れて現在は32ビットと64ビットの二種類のOSが提供されています。
調べた内容の結論を言ってしまうと、Raspberry Piでは32ビット版のDebian 13 TrixieベースのRaspberry Pi OSが提供されて、引き続き32ビット環境と64ビット環境は併存して提供されています。
本家であるDebianが32ビットOSの提供を廃止するのに対して、その派生であるRaspberry Pi OSでは継続して32ビット環境を提供してくれるようです。公式に32ビット環境を廃止するということはないようです。
一部動作に問題があったり、32ビットOSの提供が廃止されるタイミングが将来的にあるかもね、という話は、以下のURLで確認出来ます。
■Raspberry Pi は 32 ビットのサポートを削減していますか?
https://forums.raspberrypi.com/viewtopic.php?t=391459&utm_source=chatgpt.com
ここで本家DebianがTrixieで32ビットサポートを廃止したのと対照的に、32ビットOSが将来的に廃止される見通しがあること自体は言及されていますが、そのタイミングはTrixieのリリースよりずっと後だろう、ということも話題になっています。
そして、Raspberry Pi OSダウンロードには32ビットのTrixieベースが提供されていることも見逃せません。
■ラズベリーパイ OSダウンロード
https://www.raspberrypi.com/software/operating-systems/

2025年10月1日リリースで、TrixieベースのRaspberry Pi OSのダウンロードが64ビット版と共に32ビット版のイメージも提供されています。カーネルバージョンも64ビット版と同一のバージョン6.12なので、特に無理なく(同じように)32ビット版OSとしてRaspberry Pi OSが利用可能ということになりそうです。
ただ、このダウンロードページに提供されているx86版のRaspberry Pi デスクトップOSはDebian Bullseyeベースで更新が停止しているので、Raspberry Pi OSでもi386ベースの(つまりPCの)OSサポートは難しいのかもしれません。
Raspberry Piハードウェアの対応OSを調べる
以前に調べた<RaspberryPi3は64ビットCPUで32ビットOSを動かす - treedown’s Report>ように、64ビットOSに対応したハードウェアで32ビットOSのRaspberry Pi OSが動作している環境は多いと思いますが、ある世代から64ビット対応のハードウェアになっているので、64ビットOSを導入するだけで将来的な32ビットOS廃止に備えることができます。
手持ちのハードウェアはRaspberry Pi 2、3B+、4Bとあるので、対応を確認して見ることにしました。

■Raspberry Pi OS (64 ビット)
https://www.raspberrypi.com/news/raspberry-pi-os-64-bit/
ここに、以下の表記があります。(以下抜粋)
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Raspberry Pi 1(BCM2835、ARM1176/arm6hf) 32 bit
Raspberry Pi 2(BCM2836、Cortex-A7/armhf) 32 bit
Raspberry Pi Zero(BCM2835、ARM1176/arm6hf) 32 bit
Raspberry Pi Zero 2(BCM2710、Cortex-A53/arm64) 64 bit
Raspberry Pi 3(BCM2710、Cortex-A53/arm64) 64 bit
Raspberry Pi 4(BCM2711、Cortex-A72/arm64) 64 bit
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Raspberry Pi 2やRaspberry Pi Zeroまでの世代は32ビット専用と考えて将来的に廃止の対象になる(64ビット環境に移行できない)ため備えが必要になるようです。
Raspberry Pi 3(B/B+/A+)以降のRaspberry Pi 4、Raspberry Pi Zero2といった比較的新しいハードウェアは64ビット環境へ(OS入替で)移行できます。
将来的に手持ちの中では2Bは32ビットOSしか使えないハードウェアなので32ビットOS提供が廃止になるのであれば、買い換えが必要になると考えています。ただ32ビットサポートがもうしばらく継続するので、Raspberry Piの買い換えはもう少し後のタイミングでいいと思っています。
Trixieベースの32ビットOSは利用可能
DebianベースであるRaspberry Pi OSですが、本家のDebianが32ビットを終息させようとしていても、独自に32ビットのRaspberry Pi OSをしばらくは継続していく、という理解で合っているようです。
つまり本家のDebianにおいては32ビットOS搭載のDebian機器はTrixie化しないことが推奨されていましたが、Raspberry Piにおいてはそれは該当せず(公式にTrixieベースの32ビットOSがリリースしているので)Trixieへのアップグレードはまったく問題ないと考えていいようです。一安心。