treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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燃尽奮戦記―2話:そして何かが崩れ落ちる

いままで予算の無い中でもどうにかこうにか維持してきたサーバ。

このシステムは、業者が導入したものもあるし、自分で手作りしたシステムもある。
元々PCにLinuxをインストールして構築・運用していたメールサーバなどは手作りサーバの代表格のようなものだ。前任管理者のsendmail環境からワケあってqmail環境に移行し稼働していた。qmail環境の移行は誰の力も借りることかなわず、結局一人で成し遂げた今までの自分のなかでも一番の成果と言える。
会社の都合で知らないうちに保守契約を打ち切られ、必死の思いでエラー修復したプロキシサーバもその中にある。
ある日、この中のサーバの一つ、ファイルサーバの応答速度が遅くなりアクセスに時間が掛かる、という障害が起きた。遅くてもアクセスは出来ていたが調査を進めていくうちに時間を重ね、とうとう利用に支障をきたすレベルになってきた。

 ひとまず、タスクマネージャからはメモリの残量が少ない状況が見て取れたので、いったんOSを再起動し様子を見ることにした。OSを再起動することで動作は以前の応答速度を取り戻したようだ。再起動でいったん一次対処は完了とし、再発防止を目指してイベントビューアからこの障害の動作を示すログを探ることにした。
一人サーバ室でログを確認する私の元へ上司が一人でサーバ室にやってきた。
サーバ室で状況を私から確認する。私はひとまず一次対処として再起動し、再発防止のためのイベントログ確認をする主旨を説明した。
画面にはイベントビューアのログ画面が表示されている。そのサーバはWindows Server Storage Editionだったのだが、上司はそのサーバのイベントビューア画面を見て不快になったようだった。
19℃の冷房が維持された部屋においてでも彼の沸点に達する温度は低い。
「イベントビューアが日本語じゃない。なんでこんな製品を導入したんだ?」
私は、もうこれまでの数か月間体験してきたやり取りで辟易としてしまっている。もはや反論も意見もするだけ無駄なんだ、と結論は出ている。
押し黙る私に反論を求めているのか、上司はさらにこう続ける。
「俺は君と議論がしたいんだよ。分かるか?俺だけがしゃべってるだけじゃ、何も発展しないじゃあないか。議論の結果がいい環境を作るんだ。」
こう促すことで、私が話やすいようにしようとか、何か意見を引き出そうとか、そういうことなんだろうか?
でも私は知っている。
最終的に自分の持論だけを延々しゃべりたいだけなのだ。そしていざ実行に至れば上司は興味を示さない。ただし進捗はガントチャートを埋めるために興味を示すのだが。
そして、議論などするつもりは毛頭ない。なぜなら、以前から何回も言われている。
“君とその議論をする必要はない。”権威といえる直属の上司にこういわれて二の句を告げることができるサラリーマンなぞ、居るのだろうか?
「あー、一つ言っておくが。」
押し黙る私を待ちあぐねたのか、上司は突然こう切り出した。
次の句は私の予想を超える衝撃をその場にもたらした。
「キミのそれ、無駄な仕事。」
突然話が変わったような気がした。とっさに何を言われたかが理解できなかった。
上司はサーバの一台を指さして、
「その~言うならガラクタ…。」
言いかけて言葉を飲み込む。
「…失礼。レガシーなシステムをね。」
言い直して、さらに言葉をつづける。
「入れ替える、というもオマエの仕事。
それを入れ替えてないんだから、これは”怠慢”でしかない。レガシーをいくら改修しても無駄な仕事なんだよ。みんなに迷惑掛けていると自覚しろ。」
――――よくいうぜ。
この間の障害対処の際にパソコンのイメージバックアップが必要になって、3000円のパッケージソフトを購入しようとしたときに「費用対効果が」「購入した価値が」とかさんざんゴネたご身分で。
この会社、年の売上高数十億円ある会社なんだろう?あんた年商数十億円の会社のシステム部門長なんだろう?ミーティングで「売上高の1割はシステム投資するのが世の中の指標。」とか言っていたろう?
でもこれを入れ替える予算なんてないじゃないか。年初の予算ミーティングで既にある機能はそのまま死ぬまで使っておけと却下したじゃないか。
リプレイスを進めるための人手もない。それでいて何か起きれば管理者のオマエの怠慢、って、

なにか違わないか?
そう思った密室のサーバ室での出来事。
これはパワハラパワーハラスメント)じゃない。

でも―――。

この時、上司が代わってからの1年半、自分を支え続けてきた"何か"が崩れる音が聞こえた。
上司が代わってから、何かに憑りつかれたように認められようとしてきた1年半の何かが壊れる音がした。
何かに追われ続けて、何かを追い求めたかのような1年半のつもりだったが、結果何も得ていなかったことに気づく。
その実、ひたすら過去の呪縛に囚われ続け、それはこれからも永遠に続くように見えた。
理想という蜃気楼のような虚構をゴールとして一歩一歩足を進めていたという現実を目の当たりにする。

洋上の蜃気楼にゴールといえる街はない。当然ゴールへの架け橋もない。

この日、私は退職を決意した。

 

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