突然ですが、TrackPointのセンターボタンはスクロール機能として非常に優れたデバイスだと私は感じています。
ただの1個のボタンですが、ただの1ボタン以上の価値を私に提供してくれます。
具体的にはウィンドウをスクロールするときにスクロールバーにポインタを移動する数秒を省略してくれるわけです。この数秒は1日のウィンドウをスクロールする何百回(何千回?数えたことはありませんが)を掛け算すると私にとっての価値が高い1ボタンだと思えるのです。
しかしこのセンターボタン、いままで会社や自宅の環境で使っていたKVMではセンターボタンは反応しませんでした。
KVM?
ここで曰くKVMとはコンソールスイッチとかCPU切替器(切替機)という意味合いで、サーバでよく追加オプションで購入するリモートKVMやIntelvProテクノロジーに含まれるIntel AMTのKVMではありません。ましてLinuxにyumインストールするKVMとは全く関係ありません。
※Keyboard,Video and MouseのKVMとKernelbased Virtual MachineのKVMは別物です。
ここでは切替器全般をさしてKVMを呼称として使用しています。あしからずご了承ください。
ThinkPadに限らずPCを複数台切り替えて使おうとした場合、外付けモニタ+外付けキーボードを用意してKVMで切り替えて使う環境はかなり便利に使えます。
この時のキーボードは
「ThinkPad USB トラックポイントキーボード(55Y9024)」
「USB Travel Keyboard with Ultranav(SK-8845)」
を使うのです。
ちょっと古いところだとPS/2接続で、「IBM Space Saver II Keyboard」も便利に使っていました。
ただし、前まで使っていたKVMではクリック/右クリック、モノによってはホットキーも使えるのですが、どうしてもセンターボタンを使うことができるようにはなりませんでした。
いろいろ調べてみました。
パソコン切替器とパソコン切替機の違いってなんなの?(違いはないですよね)とか別のメーカだとCPU切替器という製品名になっていて、なんだか名称も統一されていないなぁ…と思うことあったり(その分検索するキーワードが増えるわけです。)とにかくいろいろな製品を見てみました。
いろいろ考えました。
おそらく上級者であれば何をいまさら…という結論ではありますが、まあ聞いてください。
考えた結果、いろいろなメーカの製品KVM製品に1つ興味が湧いたことがありました。
何かと言いますと、キーボードマウスやディスプレイのエミュレーション機能です。
概ねどの製品でも以下のような接続になると思います。
<本体>-------<コンソール切替器>-------<モニタ・キーボード・マウス>
入出力デバイスであるモニタ/キーボード/マウス×1に対し、本体が複数台となる、「1対多」の構成になります。
このとき1台目のPCを使っている途中で2台目のPCの電源をONにしたときには1台目のPCにモニタ/キーボード/マウスの出力が割り当てられているので、2台目のPCには接続されていない状態で電源ON、OS起動が開始します。これによってマウス/キーボードは不測の動作をしたりモニタの解像度を認識出来ない状態でOS起動してしまう⇒これをKVMが代理で信号を送信してくれることで起動時に入出力が割り当てらていなくても接続中の入出力デバイスを認識した状態で起動する、というのがエミュレーション機能です。(裏起動と表現しているメーカ製品もありますね。)
このエミュレーション機能のせいでKVMはキーボード上でセンターボタンが押下された、という信号がキーボードのUSBから発信されてKVMで受け取ってもKVMでエミュレーション機能にはそんな信号はないからPC側まで信号が届かない、ということなのではないか?という仮説に到達しました。
KVMにしてみれば「センターボタン押下?何?それ?」となってとりあえず無視しているといったところでしょうか?
脱線しますが、サーバラックで使うIBM製品のKVMスイッチ(例えばIBM 17353LX/4LX)などであっても、センターボタンは使えません。IBM回答で申し訳なさそうに言われました。(もちろんエミュレーション機能は搭載しています。)
元祖トラックポイントメーカーであるIBM製のKVMスイッチであってもエミュレーション機能を経由するとセンターボタンが使えないのですから、他のサードパーティーにそれを望むのは酷なんだろうな、というのが私の結論です。インフラ屋の浅見ではKVMスイッチ内のエミュレーション機能を実現しているファームウェアにTrackPointドライバで使われるコードを加える、という芸当は両方の技術を持つIBMであれば実現可能のようにも思うのですが、そんなに簡単な話ではないようです。
話は戻ります。
このように、エミュレーション機能が原因でセンターボタンが効かないのであれば、エミュレーション機能非搭載のKVMを購入すればいいのですね。
さっそく購入して試したところ、「ThinkPad USB トラックポイントキーボード(55Y9024)」が2台のThinkPadで(KVM切り替え可能な状態で)センターボタンが使えることは確認できました。
(環境によって接続するPC各々にトラックポイントキーボードドライバのインストールをする必要があります。)
エミュレーション機能で実現しているタイムラグがない切替は諦め(数秒は待っ)てもよいので、どうしてもセンターボタンが使える状態でPCを切り替えて使いたい場合の合い言葉は「エミュレーション機能非搭載」です。
最近は(ちょっと高価な機器ですが)エミュレーション機能をON/OFFできるKVM機器もリリースされてきているようです。
この「エミュレーション機能非搭載」KVMであれば、トラックポイントキーボードに限らずKVM経由で使い慣れた多機能マウスを使いたい場合でも当てはまるようです。
また最近のKVM機器はオーディオ出力(緑)とマイク入力(赤)のケーブルも切替可能な製品が多数派なようです。
最近のThinkPadは「マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック」なので、
- エミュレーション機能がポート別にON/OFF切替が可能
- 従来の赤緑に加えマイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャックも切替可能
- ドライバ不要
を満たすKVMが新発売されたら非常に魅力的です。
複数台PCを所有しているヘビーユーザの方や、SOHO/個人事務所などでは、1人が用途別にPCを使い分ける、という局面は結構多いのではないでしょうか?
そのときに、使い慣れたキーボードや手に馴染んだマウス(私はマウス使いませんが)を使える、というのは数字化できない(まさにプライスレスな)価値だと考えています。
ThinkPadのキーボードはここ数年で変遷しつつあるのでなおさら感じることですが、伝統のキーボード&トラックポイントが手に馴染んでいるユーザにとってはキーボードとトラックポイントをKVM経由により複数のPCで使うことの価値は(分かる人にとっては)かなり高い価値を感じてもらえると思います。
エミュレーション機能は本来利便性向上の機能ですので、特殊なデバイスを使いたい希望とトレードオフになってしまいます。
キーボード&マウスは自分が一番だと思える業物を使う、この価値観に理解のある方は是非KVM購入時にはエミュレーション機能に着目した購入をお勧めします。