treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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高ければ必ず価値があるものか?

今日は学生時代に体験した高級品を購入する価値観についての思い出話です。
価値観はあくまで人の主観ですから、あなたにとっての高級品は他の人から見るとまったく価値を感じないものかもしれません。
高くて価値があるもの、安くていいもの、高いのに価値のないもの、安かろう悪かろう…
こうして分類することすら、価値を感じるという観点から見れば、すべて人の主観でしかないのかもしれません。(つまり絶対的な指標はない、ということになってしまいます。)

学生時代、寮暮らしをしていたのですが、ある日(バイト先が同じなので)仲良くしていた上の階の住人が
「オレ、布団買う。オマエ知っとるか?人間は人生の3分の2布団の上で過ごしておるんやで。」
は?唐突過ぎるがなんかあった?と、まあワケを聞いていくと、、、
どうやら寮に(許可を得たかどうかは分からないが)布団のセールスマンが来たらしい。
で布団のセールスマンのセールストーク「人間は人生の3分の2布団の上で過ごしています。」にまんまと乗せられて高級羽毛布団に魅せられてしまったらしい。
その額、22万円。
その時のバイト代は月5万~10万円くらいで生活費を賄っているから、オイオイ、生活できないんじゃないの?
と、まあこう言って買うのを思い留まらせようと説得していたが、
「実はもう契約書にサインしてしまった。」(買ってるじゃん)
「ローン組んでるから大丈夫。」(何が大丈夫なんだ?)
「布団くらい高級布団を使うのが大人の嗜みというもの。」(まず私たち同じ貧乏学生な)
「まだまだお子ちゃまやのう。」(私たち同級生な)
「ば、おま、人生の3分の2の価値が最高に上がるか最低なのか、布団で決まるんだぞ。」(寝てる時に価値を感じるのか?意識もないのに。)
と、まあ、完全に思考回路が停止しています、あまつさえ私まで高級布団を買うよう勧めてくる始末…。

いや、何を買おうが自由なんだけど、でも羽毛布団貧乏になられると、ね。同じ寮で同じバイト先だとちょっと気になってしまうでしょ。挙句、お金貸して、とか言われても困る。(だって同じく貧乏学生なんですから。)
そもそも、朝~昼・夕方まで学校で夜はバイトで深夜まで、という生活しているんだから、現時点では1日の3分の2も寝てない、せいぜい4分の1~5分の1程度が睡眠時間です。
羽毛布団は一生ものではない、定期的にメンテナンス(羽毛の入れ替えとか)しなきゃいけないけど性格的にそんなことしそうな人じゃない。
自分の生活(収入)に併せて必要なアイテムは揃えていくべきであって、未来の収入に手をつけてまで買わなきゃいけないものなんでほとんどない。ましてや学生という身分ならなおさらのこと、しっかり食事を取るとか学生時代にしかできない付き合いにとかお金を使うことで経験の対価にするほうが実りある、というのが私の意見です。

うっかりバイト先でも彼は自慢してしまったようで、バイトリーダーがワクワク顔して私に話掛けてきた。
「知っているか?あいつ羽毛布団22万円で買ったらしいで。」
そうそう、聞きました。貧乏学生は22万で布団買わずに別のことにお金を使うべきですよね。

その日のバイト先が全員で「クーリングオフしろ。」とか「契約は錯誤ということで今ならまだ返品して無効にできる。」とか、散々(数時間は)説得を重ね、クーリングオフ(を約束)させることに成功しました。
彼は22万円の負債を抱え込むことなく、また普通の貧乏学生に戻りました。

クーリングオフで無事返品した日。
その夜、私の部屋を誰かが訪ねてきた。
誰あろうクーリングオフで返品を終えたミスター羽毛布団の彼が入口に立っていた。(ゴゴゴゴゴゴ)
「布団をクーリングオフしてしまったから布団がない。責任取ってキミの布団で寝させなさい。」
ん?羽毛布団はクーリングオフしたんでしょ?
「そうそう、羽毛布団のセールスが「古い布団はコチラで捨てておきますね。」と言って俺の布団を捨ててしまった。いま俺の部屋には布団がない。布団がないと寝れないよな?だからキミの布団貸しなさい。」
ば…ばかなッ!布団が…布団がァァァァァァ~ッ!!
「てめーの敗因は…たったひとつだぜ…たったひとつの単純な答えだ…
 てめーは俺にクーリングオフさせた。」

スタンド使いか、あんたは。

その日から数日(布団を買うまで)深夜まで対戦ゲームで時間をつぶすのに付き合うことになるとは思いもよりませんでした。


「訪問セールスでモノを買うもんじゃない、必ずお店に行って良いか悪いか見てからじゃないと買うべきじゃない。」
というのは私の母親からの教えです。
この教えがあったから、幸い今まで悪質な訪問セールスは(ギリギリのことはあっても)うっかり購入してしまったことはありません。
甘い電話セールスも多いですよね。
有名なところでは歩道歩いていたら、ビラ配りにチラシ渡されて、うっかり受取ろうものなら、キレイ目のお姉さんから画廊の中に連れ込まれて、延々何時間も「絵ってスバラシイ。」という話を聞かなきゃいけない、買うまで帰れない、というキャッチも捕まったことはありますが、辛うじて買わずに脱出できました。
この教えの意は「雰囲気にはお金払わない、商品にお金払う。でも訪問セールスは雰囲気にかなりお金払っているよね。」ということなんだと思います。つまり1商品を1対1の対面形式で延々礼賛するような時間を与えられれば少なからず雰囲気に財布の紐が緩むということなのだととらえています。

で、貴方は訪問セールスを受けているその時間にお金払っているの?それともセールスされた品物にお金払っているの?もしくはその両方なの?でもあなたは通常であれば(冷静な時の貴方は)品物にお金を払う人ですよね。だってそんなお金持ちじゃない。
これが頭では分かっていても雰囲気に影響されて、何時間もセールストークを聞いてしまったとき人は冷静ではいられないのでしょうね。ひとごとだけどいい勉強になった。


と、まあこんなことの顛末から数か月後。

3駅隣の町に住んでいる高校時代に同じ部活だった友人(私とは別の学校に進学)から私の寮に電話が掛かってきました。

電話取次ぎの寮母さんに御礼を言って電話に出ると、しゃべりたくてウズウズしていたんだろう友人が開口一番こう言った。

「久しぶり。オマエ知ってるか?
”人間は人生の3分の2布団の上で過ごしてるんだぞ。”
俺さぁ、最近高級羽毛布団買ってさぁ~。」

コイツもか…。