今回は以前のエントリに多少反する考え方と方法論を述べることになるかもしれません。
前回エントリ「高ければ必ず価値があるものか? - treedown’s Report」では買い物で失敗した同級生の話をご紹介しました。
今回は失敗しない買い物についてご報告いたします。。
買い物、は誰も避けられない行為です。買い物をしない人はめったに居ないと思います。
でも買い物は良かったと思える買い物と失敗したと思う買い物が誰しもあると思います。
出来るだけ買い物で失敗したくないですよね?
私は安物も高級品も買って損した…とか失敗した…と思いたくない性質ですので、買い物にはある程度の自問自答と警戒心を持って予算執行(購入)を実施します。
もし、買い物で失敗することが多いのに具体的な対処方法が分からず繰り返し失敗してしまう方、参考になれば幸いです。
私が気を付けている買い物のポイントは
- 購入する製品(商品)に対する知識が深いかどうか
- 本当に必要な機能、あるいはその機能によって便利になった自分を具体的に想像できるか
- 購入費用(イニシャルコスト、初期費用)以外の運用費用(ランニングコスト、月額(年額)費用、消耗品費)はどれくらい必要になるか
- 製品故障や問題があって正常利用できないときの保険
- 自分が好きになれるかどうか(嫌いではないか)
この5点が重要だと考えています。
それぞれを深掘りしていきます。
(1) 購入する製品(商品)に対する知識が深いかどうか
製品に対する造詣が深ければ、その価格は妥当か安いか、を見極めることができます。俗にいう目利きが出来る(目が利く)状態です。
例えばPCでいえば、メーカーとそのシリーズ、使われているパーツ、価格とディスカウント率、余分な機能が含まれていないかどうか、廃棄時に掛かる費用がどれくらい必要になるか、が理解できる状態です。
私は購入する時にはかなり調べます。
メーカが公表する製品情報に加え、ブログや製品レビューでの利点欠点、実際に購入した人は何が気に入ったかなど、実際に購入した人の知識も幅広く活用させてもらっています。
安くてもすぐ壊れたら嫌ですし、壊れたら捨てて買い直しを繰り返すというのもどうも性に合いません。
でも最近インターネット上では、壊れたらテレビやビデオを修理してしまう猛者がいたり、使えないPCのコンデンサを交換して(半田付け)復活させてしまう強者もいるようですね。(インターネットのォォ科学力はァァ世界一ィィィ)やはり製品に対しての知識が深ければ可能性は無限大です。
じゃあ、商品知識がなきゃ買い物できないの?と言いたいわけではありません。商品知識が無いなりの購入方法をお勧めしたいということです。
例えばパソコン、使うには知識が必要ですね。
でも知識はない、これから始めるんだから知識がないのは当たり前ですよね?
ここまでは正しいです。が、この先の製品選定が問題です。
初心者の方はPCを買いに行くと電気量販店の店員さんや知識のある(たいていは玄人とかマニアとか周囲から思われている)知人のオススメをそのまま受け取って、結構な値段のパソコンを買ってるケースが多いです。(少なくとも私の周囲では)
でも大体上記のキャストが薦めるのは、
- 「当たり障りのない全部入りのPC」=無駄が多い
- 「量販店が販売強化しているメーカーの製品」=量販店が売りたいだけで買う人に合っていると限らない
- 「玄人/マニアが使っているものは良いもの」=盲信であり初心者に使いこなせない
と、まあこんなところでしょうか?
誰も最初は知らなくて当然ですから、私は「買い物のための買い物」をお勧めしたいと思います。
これはどういう方法論かと言いますと、
知識がない最初は、とにかく「許容できる低機能な、かつ許容できる程度安い商品を買う」という方法です。
古来から伝わる有名どころでは「決算セール時期に」「型落ち品を安く買う」、というのがこれです。
とにかく価格と自分に必要最低限な機能が備わっている商品を買うわけですね。(自分に必要最低限な機能が何か、くらいは調べてから買いましょう。)
で、実際に買いに行くと「先進的機能」「新商品の新機能」を武器(※)に高額商品を薦められますが、どうにか振り切ってくださいね。
(※)洗濯機でいえば特殊なコーティングや防カビ機能とか、冷蔵庫でいえば特殊なチルド室/野菜室の機能とか、現地で説明された初めて知る機能です。もちろんそういった機能を必要としているのであればその機能を備えた商品を購入するべきです。
商品知識のない状態であれば、最低限の価格で最低限の機能を使うだけで満足できます。実際に使わない機能に支払いをする必要はないでしょう。
で、何年も使っていると不満が出てきます。「テレビでこんな新機能(新製品)のCMを見た。」とか「雑誌にこんな新機能(新製品)が載っていた。」とか、その商品に触れていくうちにその商品に対する知識が不満や欲求という形で蓄積していきます。実際にそのジャンルの商品を使ってみて知識や経験を蓄えると次に買う商品の選択肢は何も知らない状態よりぐっと洗練された選択ができるはずです。
実際に不満や要望がなければそれはそれで安くて良いものを買えたと、いうことになります。そのジャンルの商品は必要最低限の機能しか求めていない、ということですよね。
使ってみた体験から分かることはカタログで見たり店頭で聞いたりするより圧倒的な知識として定着します。これを経験といいますね。
会社の製品選定では例えば「体験版」やメーカー・代理店から「プレセールス用の貸与機器・ライセンス」を受けて実際にその製品を導入したラボ環境で徹底的に検証し、費用対効果を算出するとともに、その製品が既存の環境に与える影響や導入した場合の作業を細かく洗い出す、という努力の末に稟議⇒調達⇒導入、に漕ぎつけるわけですが、その手法をコンシューマー向け(家庭用)に応用するとなると「必要最低限の機能を最低限の価格で入手する。」という方法になるんではないかと、そう考えたのです。
学生や主婦が初めてのパソコンを買う、とか、一人暮らしを始めるために白物家電を初めて買う、とか、自分の知らないジャンルの商品を購入するときは「自分の希望通りの買い物をするための初期投資として一回目は安物を買う。」という手法、もしよければご自身の視点を広げるために考えてみてはいかがでしょうか。
(2) 本当に必要な機能、あるいはその機能によって便利になった自分を具体的に想像できるか
2番目に挙げておきながら私は一番重要視している項目です。
高くても安くても(たとえ100均商品でも、です)「これは本当に自分の生活に必要か、自分の生活を潤してくれるか。」を徹底的に考えます。
徹底的というのは、購入を検討している商品を"どんなシチュエーションで"、"どのように使っているか"を可能な限りたくさん考えます。
使う頻度が多いか少ないかもそうですが、頻度が少なくてもその少ない使用回数で絶大な効果をもたらすことはないか、を考えます。
普段からこれを考えることが習慣になっていると、いざ高額商品の買い物であっても自分の中で考えることが鍛えられているので、なりゆきや勢いで買って失敗、ということも減らせます。
会社の選定では、合理化/効率化を進めるためのコストダウン策として製品選定をすることが多々ありますが、これも脳の使いどころは全く同じなのではないかと思います。
スーパーで食材を選ぶときに安いからとあれこれ買って食材の廃棄ロスが高くなることで翻って高い買い物になる、というのは有名ですね。
とにかく捨てないために、使えない(使わない)もので部屋・身の回りが溢れるのも空間をロスしていることになります。
購入する時に本当に必要な機能が商品に備わっていなかったり、その商品の価値によって自分の生活が潤っているイメージが持てなかったりといった状況で購入した商品は結局使わずに捨てる=投資した額が取り戻せない状態に陥ることになりがちです。
PCを買ったはいいがOS起動もせず埃を被っている状態、とかスマートフォン買ったはいいが電池が持たないから結局ガラケー使っている(これ私です)とか、バーゲンで安いからと服を買ったけど結局着なかった、とか、みんな契約しているから光回線を契約してるけど、家ではほとんどインターネットしない(スマホしか通信していない)とか、発信も着信もしない固定電話をずっと惰性で契約し続けている、とか、挙げればきりがないですよね。
要するに、購入して受ける恩恵は自分の生活や活動にプラスになる、と確信できれば購入すべきですし、その効果のほどは分からないのであれば、ちょっと待って(購入は見送って)しばらくその製品がない生活をしていてもいいよね?、ということです。
実際に「あの製品があればよかった!」と思うような状況に遭遇するまで待ってて、そのあとで改めて購入を再検討しても遅くはないことが多いです。(待ったほうが新製品でより優れた製品を手に入れることができますし)
訪問販売、テレビショッピング、電話セールス、いろいろと甘い誘惑があなたの財布を緩めようと狙っていますが雰囲気で流された形で購入を決定せず、冷静に、時にシビアに、自分の欲求を決裁する立場で購入前に考え直してみましょう。
その商品を使っている未来の自分が想像できて、本当に必要なら買えばいいのです。
3) 購入費用(イニシャルコスト、初期費用)以外の運用費用(ランニングコスト、月額(年額)費用、消耗品費)はどれくらい必要になるか
プリンタが分かりやすいかもしれません。
プリンタ本体の購入費用は安価なプリンタから高価な多機能プリンタまで多岐に渡ります。
一方でプリンタを継続して使い続けるために、インクやトナーを買わないといけません。
本体が安くてもインクやトナーが高いプリンタ、逆に本体は高いけどインクやトナーは安いプリンタ、と消耗品を組み合わせるとトータルの費用が逆転することもあります。
ここで重要なのは、そのプリンタをどれくらい使うか、によってランニングコストが変わってくるということですね。
どれだけ(自分も含めた)見込みユーザはその製品を使うのか、ということが分からないとランニングコストは試算が難しいところです。
会社でも製品選定時に重要視されるのはランニングコストがどれだけの予算へインパクトを与えるか、という部分に着目します。イニシャルコストはあまり厳重には見ないことが多いですね。
会社の場合には機器を購入するようなイニシャルコストは財務諸表は貸方(現金)から借方(資産)に移るだけだからあまり重要視されないという一面もあるかもしれませんが、投資や一時的な費用よりも販管費や継続的な費用の方を注視するマネージャは経験上多いです。
これもトータルで考えてどれくらいの費用になるか、という部分が重要だということを示していると思われます。
つまり、検討している商品が数百円安いから、と決定する前にその商品に付随する消耗品(周辺商品)にも着目して何回その消耗品を購入することになるか、という視点で一度計算してみると意外な結果になるかもしれません。
最近では、安物でも購入してしまったら廃棄にそれなりに費用が掛かってしまうご時世ですから、購入費用が安いか高いかは廃棄までトータルで考えることで、はじめて自分の支払う額が分かるというものです。
テレビなんかはいい例ですかね?リサイクルショップで50インチテレビが安いから買った、といってもすぐに故障して映らなくなってしまったら捨てるしかありません。(リサイクルショップで買ったテレビを修理に出します?それも自由ですが)
でも50インチテレビを捨てるには処分費用数千円に加えて運送料数千円が必要になります。購入費用に加えてざっくり5千円~1万円弱を加えて実際に使用した日数で割ると、意外と安くないな…ということもあると思います。
前出の「買い物のための買い物」で初期投資として安物を購入し知識/経験を蓄える、と書きましたが、安いからといって中古品やオークションでジャンク品を調達すると、上記のように
「中古購入費+廃棄費用/使用した日数 > 新品購入費/使用した日数」
となってしまうかもしれません。
既出ですが、中古は目利きと知識(そして割り切り)が必要な商品です。
4) 製品故障や問題があって正常利用できないときの保険
保険と言っても動産保険や火災保険、地震保険のような保険ではありません。
その商品を熟考していよいよ購入を決定し、調達が完了したあと、使用開始となります。
形あるもの必ず滅する。諸行無常…。という言葉にもあるように、
使用しているとどうしても故障/破損により使えないタイミングは訪れます。
このときどうするか、どうしょうもない状況になる前にあらかじめ備えておくことができるかどうか、ということです。
PCや家電なら、修理保証/メーカー保証を長期でつけておく(ないし量販店の修理保証を付ける)といった方法で故障に備えるのも一つです。
100均で買うような安価な製品であれば、生産終了になる前に予備として2つ目を買っておくとか代わりになるような製品をチェックしておくとかも備えとしての一つです。
会社でいえば、バックアップとか冗長化、という部分ですね。
ある程度の規模が大きい会社のシステムなどではシングルポイントを作らないようにするのが定石になっています。
さすがに小規模・SOHO・個人事業主では全部冗長化することは予算面で困難ですが、せめて停止に備えたコールドスタンバイくらいは用意しておくほうがいざ障害発生時でもがんばればどうにかなるくらいには抑えられるのではないでしょうか?
ここが無策だったりうっかり見落としがあったりすると、本来の業務がおろそかになって障害・トラブルシューティングに時間を大量に消費することになってしまいます。
まぁでもオーディオ/ビジュアルとか趣味に関わるところなら我慢すればいいだけなので、これに当てはまるものではないかもしれません。
使う製品が重要で代えがたいか我慢できる範囲かを判断できるのは、実際に購入して使っている本人にしかわかるものではありません。
備えができてないために大事なデータを失ったり、重要な局面で使えなかったりしてしまうと製品が悪くないのに買い物としては失敗したという印象になりがちです。
自分にとって重要なものは予め備えをしておく、これによって成功した買い物が失敗に転落しないようにしておく、というのも失敗しないために重要なポイントです。
5) 自分が好きになれるかどうか(嫌いではないか)
例えばパソコンであっても、見た目が好きになれるかどうか、手触りが好きになれるかどうか、も重要だと思います。
工業製品にこんな条件を求めるのはどうかしているッッッ!と思う方が居てもそれは間違ってはいませんが、実際所有物が好きになれるかどうかの条件には人間である以上、見た目・手触りといった条件も(意識するかどうかに関わらず)あると考えています。
パステル調のピンクが多い女子の部屋に、真っ黒なThinkPad…。
うーん想像できません。
多少偏見込みですが、やっぱりパステル調の部屋だとMacBookとかVAIOのカラーバリエーションから合う色を選んで設置されている方がしっくりきます。
自分が好きになれるかどうか、という抽象的な指標はちょっとこれまでのポイントと趣が異なる点ではありますが、私個人は結構重要なポイントだと考えています。
好きになれる品物なら、埃を被ることもなくなんとなくでも触れるようになります。
好きな品物は想像力が湧いてああやって使おう、こういう使い方はできないか、というアイデアが湧いてくる、ということもあります。
好きな品物の製品マニュアルやインターネット上のレビューが目に触れたらちょっと読んでみると思います。
自分が好きになれた品物は、このように積極性が増すことで情報に触れる機会も増えてくることと思います。こうなると好循環で競合製品なども調べだすと、もう立派な玄人へのスタートラインに立ったと言えます。
以前勤めていた会社のPC選定でも同じようなことはありました。
以前勤めていた会社ではThinkPadで統一していたのですが、事情があってモバイルPCだけ別のメーカーのPCを導入することになりました。
そんなとき、同僚が、
「これ(今まで違うメーカーを選定したから)、(ユーザの)みんな好きになれるかな?」
と質問してきます。
「いやぁ、みんなミーハーだし、もともとこのメーカーのPCを導入するべきとか言ってたユーザも一部に居たくらいだから大丈夫でしょう。」
という会話を交わしていました。
ThinkPadでクライアントPCを統一して7・8年くらい経過していましたが、この年月の間でちょっとパソコンに詳しいユーザからは「国産メーカの○○がよい。」といった類の指摘は何回か受けていました。
(取引先だからバーター目的で推してくるユーザもいましたが)
実際に別メーカPCを配布してみると、
前に使っていたPCは指紋認証ができたからよかったなぁ、とか前に使ってたPCのTrackPointが忘れられない、とかキーボードの感触が前のPCのが良かった、とか、いろいろ個人的な感覚の話が舞い込んできました。
まあ、ユーザのみなさんは許容できる範囲内だったようで大きな混乱は無かったのですが、いちおうキーボードやトラックポイントがよい、という感覚は私も共感するところがありましたので、USBトラックポイントキーボードを教えてみました。
私は以前から私物のトラックポイントキーボードを持ち込んで使っていたので、実際にこうやって使っているんですね、っていうのをユーザが見に来ることがちょくちょくありました。
以前から外付けモニタ出力でノートPCのデスクトップをマルチモニタで利用するのが社内で流行っていたのですが、それにUSBトラックポイントキーボードを購入して完全にデスクトップのような形状で使う(会議の時やモバイルの時だけノートPCの形状で持ち運んで使う)、という進化をみせた使い方が徐々に流行し、最終的には結構な数のユーザが液晶モニタとトラックポイントキーボードでノートPCをデスクトップのように利用する光景がオフィス内に目立つようになった記憶があります。
この流行り方をした理由が、まさに「自分が好きになれるかどうか。」に通じてるのだと思います。
つまりこの例でいえば会社の決定だからメーカは選べない、でも仕事道具は「使いやすい」かつ「慣れ親しんだ」道具を使いたい、じゃあ入出力デバイスだけ好きなデバイスを使おう、ということですね。
「トラックポイントが使いやすくて好きだ。」だったり「キーボードが手に馴染むから好きだ。」だったりして、わざわざ部内の消耗品予算を使って外付けキーボードを購入して自分の好ましい環境に進化させたといえます。
PCの話に偏ってしまいましたが、たとえば別のジャンルの商品でも長きに渡ってシリーズが続いている製品がいくつかお見受けします。これなんかも、使っている人がリピータになっていることでシリーズが途切れることなく継続しているからなんだろうなぁ、と思います。
幸せは小さな積み重ね、レベルアップは小さな経験値の積み重ね、
「買っててよかった100均グッズ、買わなきゃよかったマイホーム」
などというセリフが頭をよぎらないよう、やっぱり普段から自分の買い物能力を鍛えておくほうが、未来の人生で大きな買い物するときにレベルの高い消費活動ができると思うのです。
貴方の買い物がすべてにおいて幸せであることをお祈りします。