日本は民主主義の国、多数決で多数派が正しい民族、とはいえ、周囲の多数が必ずしも正しいわけではない、というご報告です。
今回も昔話です。
ある日、休憩所で同期と休憩中の談話を楽しんでいるときのことです。
他部署の部長が難しい顔して休憩所に居る私の前の椅子に座りました。
「二人とも、メガネ…。掛けてるな。」
はい?私は確かにメガネ掛けています。だって近眼ですから。
「じゃあ、大丈夫だな。いまな、勧誘が流行っているんだ。知ってるか?」
ん?流行っている?最近ニュース見てないものですから…すいません。何某かの団体がまた世の中を騒がしているんですか?
「違う違う。社内の若い社員に、だ。」
ここで、会話していた同期がピンときたらしい。話に入ってきた。
「あぁ、あれですか。やばいですよね。」
部長はため息交じりに
「この話題はさ、メガネをさ、掛けてる社員しか信じられないよな。メガネをかけていない社員はまず疑ってかからなきゃいけない。」
あの…私、置いてきぼりなんですけど。
「どれどれ教えてやろう。あのな、最近社内で若い男性社員を中心にある団体からの勧誘が流行っていて、勧誘された社員がその団体の活動にハマり込んでるらしいんだよ…」
と、教えてもらった説明としてはこんな感じ。
今、ある団体の勧誘に引っ掛かる若い社員が続出している。そんでその団体に所属する契約を締結した社員はある外見的な特徴が出るらしい。
そしてその団体へ所属するに際して、その外見的特徴がルール化されているので、すぐわかるそうな。
その特徴的なルールとして、
1)髪型はかならずオールバックに固めないといけない
2)鞄はジュラルミンケースでなければいけない
3)メガネはかけてはいけない(近眼はコンタクトで補正)
で、その人たちは何をするかというと、40万円の教材をいったん自分で購入して自己啓発する。
そののち自分の自己啓発の成果をプレゼン材料として40万円の教材を別の自己啓発したい人に売る。売られた人はまた40万円の教材で自己啓発したのち、40万円で教材を…。
と、こういう拡大をしていくようです。
この急速に拡大している勧誘がある部署の1室で勤務する社員に限定されていて、その部屋の社員は9割がこの団体に所属している可能性が高いそうです。
で、この社内での流行が見過ごせないレベルとなって、経営者/管理職側からすると問題視せざるを得ないほどの拡大を見せている、とこういう話なのです。
想像できますか?
1日、2日、3日、1週間…、と毎日毎日メガネを掛けて普通の髪型だった社員が一人、二人とメガネをはずしオールバックになっていく日々の光景。
で、その恰好した人たちは全員ジェラルミンケースで出勤してきます。
ちょっと怖いですよね。
他部署の部長は、
「頭がイタイ話だよな。キミらもそういうのに引っ掛からないように気をつけなきゃいかんぞ。」
ご忠告ありがとうございます。
最初は信じられなかったんですが、実際に朝の出勤時にこの特徴的ないでたちをした社員を何人か見かけるようになると、他人事ではなくなってきたような気になってくる。
素直な感想として恐怖の感情が芽生えます。
でも、拠り所がない人々にとっては拠り所なのかなぁ、とも思った一面はあります。
もっといい拠り所があればよかったのですが、たまたまその人にとっては盲信することが拠り所になってしまった、ということなんだと思うんですよね。
さらに加えると、ある部署の1室ではこの団体に所属することが多数派なのです。少数派の心労を察すると心が痛みます。
なにか他になかったのかなぁ…。
拠り所を求める心情は理解できます。こんなご時世ですからね。
しかし、一方で冷静な自分も維持してもらいたいとも思います。
多額の金銭を要求されるような拠り所、依存したい気持ちは分かりますが依存する前に多額の金銭を要求される、という事実を冷静に考えてもらいたいと祈っています。