treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

※https化しました。その影響でしばらくリンク切れなどがあるかもしれませんが徐々に修正していきます。 リンク切れなどのお気づきの点がございましたらコメントなどでご指摘いただけますと助かります。

(1/2)システム部門長がリソース制裁-前編

むかーし、昔。
あるところにシステム部門があったそうな。
そのシステム部門の部門長は、怒ると誰も手が付けられないほどおっかなかったそうな。
その日もシステム部門長は怒りが瞬間湯沸かし器のごとし…

始まり

「オイ、こいつのメールアドレス消しちまいな。」
突然部門長からの指示が飛んできた。なんです?いったい…?
「分かんねぇかなぁ、コイツのメールアドレスを削除しろ、と言ってるんだよ!」
最初に話しかけられた時点で部門長が怒ってるのはなんとなく伝わってきていたんだが、さらに語気を荒げた部門長に恐る恐る質問した。
「どの、メールアドレスです。」
私は努めて冷静に聞いた。火に油を注ぐことになってはこちらが被害をこうむることになってしまう。
部門長から提示された申請書を見ると、同期の営業マンの名前がそこにはあった。
「このユーザは退職もしていない現役の社員です、いま使っている最中のユーザですよ。」
なにせ営業なら電子メールは電話と同様に顧客との連絡手段として重要な一つのアイテム。止めてしまうのは問題だ。何とか怒りを鎮めてどうにか穏便にことを済ませたい。
そんな気持ちを知ってか知らずか、部門長はさらに強い口調でまくし立ててきた。
「いいから消せよ、今すぐ。早く削除してしまえ。こういうヤツにメールなんかつかわせるんじゃーねーよ。」
このままではいかん。
まずは事情を聞くことにした。そこから突破口を見出すんだ。
「何か、あったんですか?止めてしまえば問題になるかもしれません。」
営業部の業務を妨害しているじゃないか!なんて部署間のいさかいに発展してしまえば社内でも問題になってしまうかもしれない。そういうのに巻き込まれるのは御免こうむりたい。
こんな心配をよそに、部門長は怒りを増幅させて意思を堅くしたようだ。
「いま、メールアドレスの再申請をユーザに要望したのは知っているだろ?こいつだけ出していないんだよ。さあ、早く消せよ。」
確か、メールアドレスの棚卸とパスワード更新のために、ユーザから申請書を取り直していた、というのははた目から見てなんとなく知っていた。どうやらこの同期の営業マンだけ再申請の書面を提出しなかったらしい。そうか…。
部門長は続けた。
「こういう申請書を出さなくてもどうにかなる、というような悪い文化は根絶してやる!やらないんならきっちりその代償を払う、ということを見せつけてやる必要があるんだよ!!ほら、消してしまえよ。」
これだけ怒りのエネルギーで盛り上がった部門長を止めることは難しい様だ、と、このとき判断した。
何せ、"申請書を出さない社員には罰を"が大義になっているのだ。何らかのペナルティを背負わせなければ怒りは収まらないらしい。
やむを得ず、ユーザのメールアドレスを凍結することにした。穏便に済ませる、ってのは無理だ。とりあえずパスワードだけ変えておく。ただし同期のよしみで、アドレスを削除しないようにしておく。

「このユーザのメールアドレス、削除しただろうな。もう使えないだろうな?」

部門長は再三の確認をしてきた。私は質問にはすべてこう答えることにした。

既にメールアドレスは使えなくなっています。

怒鳴り込み

「いったいどうなっているんです!メールが朝から使えないじゃないか!!!」
電子メールを使用不可とされた営業マンがすごい剣幕で怒鳴り込んできた。
部門長が応対する。
「ああ、メールアドレスなら消したよ。」
こともなげに軽くいう部門長。営業マンはその態度にますます怒りを増幅させて噛みついた。
「営業が、いまメールを使えません、なんて会社であり得ないでしょうが!
客に"いまメールが使えないものですから"なんて、言えるわけないでしょうが!
さっさと開通させてください。」

部門長は徐々に語気を強めて話し出した。
「じゃあ、聞くが。そのメールアドレスを継続して使いたいのなら申請するように、と社内で決まったその会議の場に居ながらにして、なぜこの数週間の間で申請しなかった?」
「なっ」と声にならない声が営業マンから漏れる。

営業マンは反論を絞り出すのが精一杯のようだ。
「に、しても、突然メールを止めてしまうなんて横暴じゃないですか!こっちとら客のメールを受け取っているんですよ。それが止まってしまうのがどういうことか分からないわけじゃないでしょうが。」
営業マンとしても怒りは収まらない。

それを尻目にドンドン続く部門長のセリフ。
「その会議に出席していた営業マンも、その会議に出席しなかった営業マンも、そのほかの部署の社員も、全員申請書を提出して再申請しているんだよ。キミ以外はな。
直接その取り決めを聞いたキミ自身が提出しなかったのはなぜだ?
他の社員は全員できていることができなかった理由はあるのか?忙しかったから?そんなの言い訳にならない。だって他の忙しい人は全員申請書を出しているんだ。」
こういって言葉を続けているうちに、自分の言葉で怒りを増幅させ怒り出すのがこの部門長の特徴だ。例外なく怒りが頂点に達してきたのを感じた。
「一人だけ決めたことを破っておきながら、権利だけ主張するのはどういうことなんだよ!
やることやってからものを言えよ!
オマエがやることはただ一つ、申請書を持ってこい!!!」

話しても無駄だと悟った(らしい)営業マンは、憮然とした表情で黙り込んでしまった。
すぐ踵を返すと自部署の自席に戻っていった。

「ハッ」

部門長が声か呼吸か区別がつないような音を漏らした。
続けて、今回の一端となった要因を垣間見ることになった。
部門長が言葉を続ける。

「だから、アイツ、嫌いなんだよ。」

私は人間の闇をちょっとだけ見ることになった。