treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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個人のホームページを閉鎖するように指示を受けたとき

今日の内容は昔の出来事です。昔はホームページ、いまはSNSという道具で個人が情報発信することについての視点を一考する、というご報告です。

 

昔、ホームページを持っていました。
そのホームページは日記メインのコンテンツでした。

ある日別部署の部長に呼び出されてこういわれました。

「ホームページやってるよね?」
メガネをちょっとズラして、正面から上目遣いで私を直視する。このポーズ、威圧しているわけじゃないんだろうけど内容によってはそう感じる、この部長の癖なんですよね。
このときは確かに、ホームページを運営していました。まあ隠す必要もないので日記がメインのホームページを持っています、と答えました。
で、それがどうかしましたか?、って話になりますよね。
部長は、こう続ける。
「閉鎖して欲しいんだよな。なるべく早めに。」
ん?ホームページを閉鎖してって、私のホームページのこと?なんで?

まずこの部長がホームページの存在を知っていたことに驚きだったのだが、それ以上の驚きが"閉鎖してくれ"というお願い。
えーっと。私の体験を平日・休日問わず織り交ぜて日記を書いているだけなのですが、ダメ?
「ダメじゃない。ダメじゃないだよ。いや、というよりホームページを閉鎖してくれとか私がいうのもバカバカしいんだけどな。」
うーん。話が見えません。
部長は続けます。
「社員らしき匿名でメールが入ったんだよ。"こんなページがあります。会社の内部事情が書かれています。このページを放置しておいてはいけません。"と言うんだ。な?バカバカしいだろ?」
ちょっと微笑を浮かべつつ同意を求めてきた部長。
ご贔屓に。ありがとうございます。まったくもって手放しで同意します。

「私も読んだんだけど、オモロイからやめてもらいたくないんだよね。」
おぉ。ありがとうございます。
「でもだからと言って、いま会社がデリケートな時期に、匿名でかつこういうこと言ってくる奴がいる、ってことと、それに対する対処として、こうやってホームページ閉鎖をお願いしなきゃいけないってことがバカバカしいんだよな。」
部長の言は止まらない。
「だってさ?おかしくないか?実際に特定しようと思えば特定できる形でホームページに書いている奴を、匿名で非難して会社に閉鎖させろ、と要求する奴。」
なるほど、それに何の大義があるのか、ということか。
まだまだ部長は止まらない。
「この匿名のメール送信した奴も、たぶんウチの社員だけど名も名乗らず匿名でこういうこと(閉鎖の要求)を会社させようだなんて、ズルいにもほどがある。良くないと思うのなら堂々と自分の意見として述べればいい。名乗ればまだしも、こいつは名乗っていない。」
結局あれだ。非難したいが自分が発言したことに対するリスクは取りたくない、だから匿名で会社にメールした、というところか。
で、私は日記の内容を見ていれば、体験談だから絞り込もうとする前に、内容が狭すぎ(レアすぎ)て誰が書いているか一目瞭然と。

匿名のインターネット上で、当事者からは顔が見える人物のホームページの日記を問題視し、顔の見えない匿名の投稿者が会社に対して閉鎖を迫る圧力を掛ける、というなんだか変な構図になっています。
私の意志として部長に伝えたのは、自分の体験したことと考えたことを日記として書いている、事実を書いていてウソはついていない、脚色もしていない、この点を満たしたうえであくまでもプライベートで書いているけど、それでも問題ですか、ということに疑問があるということは正直思うところです。

でも、逆に体験した事実を正直に書いている、ということも問題になるんですかね。
そして、だれでも見れるところに会社の内部事情が書いてある、という点が問題なわけですかね?
「そう。だからせめて君のホームページは会員制にしてもらいたい。ユーザ名とパスワードを知らないとコンテンツが見れないように。できるだろう?」
部長は笑いながらこう続けた。
「匿名は、パブリックの場に情報発信されていることを問題にしている(ように見受けられる)わけだから、ユーザ名とパスワードを知らなければ閲覧できない、ということならいいだろう。で、そのユーザ名とパスワードは私にも教えなさいよ。」
と、ここで黙っていた別部署の同僚が、
「ははは。じゃあうちのサーバでページ公開しますか?」
と、意外な進展を提案する。
ん?サーバ、持ってるの?
「うちはUSENの光サービスなんでグローバルIPが標準でついてくるんですよ。でいまApacheでWebサーバ公開しています。なのでhttpd.confのバーチャルホストで領域作れますよ。もちろん認証もできますよ。どうします?」
おぉっと。意外なところからやってきた助け舟。
もちろん二つ返事でお願いすることにした。

話の方向性がまとまったところで、
「そんで、さ。」
おもむろに部長が切り出した。
「日記の中で、あだ名つけてたろう?私はどれなん?」
匿名の投書で問題視されていた日記内に登場する人物は実在の人物をニックネームで呼んでいたのだが、これを本人から質問される日がまさかやってくると思っていなかった。
しょうがないよね。ここまでバレテルンダシ。
私「部長は、"将軍"です。」
「将軍って、あの将軍か?」
私「そうです。征夷大将軍の将軍です。」
「将軍って…。カッコイイじゃないか。よしよし。」
なんだか満足した様子の部長にホッとし、休憩にならない休憩を終えた一同は休憩所を後にし、業務に戻ったとさ。


こうして、私のホームページは本館(従来の場所)から一部コンテンツを引っ越しして、別館(別の場所)でBasic認証を掛けてユーザ限定コンテンツに生まれ変わることになりました。

部長に報告したのは言うまでもないのですが、他の読者にもBasic認証の情報を伝えました。
でも実際に連絡が取れるリアル知り合いはいいとして、実際に連絡が取れないネット上だけの付き合いでは、連絡が取れないので、閉鎖しちゃったね…、で終了したことになります。

こうして匿名の投書(メール)で閉鎖を指示された私のホームページは、コンテンツ引っ越し、という形で幕引きとなりました。

いまとなっては完全に閉鎖してしまったそのホームページは、かろうじて残骸がInternet Archiveで閲覧できる程度の状況です。でも見ると当時を思い出します。
昔のホームページを読んでいると思ったのは、
「昔の自分、意外と面白いな。」


と、まあここまでで一つの事の顛末を書き終えたわけですが、やはりここから分かることは、
「インターネット上では誰が見ているか分からないから、読み手を意識して文章を書くようにしなければトラブルになりかねない。」
ということは注意しなければならないところですね。

最近ではSNSなども同様の考え方ですよね。

読み手がどのような手を使って活動を制限するか、なんて分からないですからね。(ここでいえば会社へ匿名の投書をし圧力を掛ける手でこれ以上の日記の更新と既存コンテンツを閉じようとしているわけです。)
さらに、自分の書いた内容がどのくらいの範囲に拡散するかも、最近では予想が付かない広範囲にトンデモナイ速度で拡散します。
読み手の顔が見えない以上はこれらに注意するに越したことはありません。
で、読み手を選ぶ内容をどうしても書きたい/発信したい、そして共感を得たい、という場合には、ユーザ限定コンテンツとして公開ができるよう仕組みを自分で用意しておき、その限られたスペースで交流したほうが問題にならずに済みます。

いちど、ご自身の情報発信について、
発信前に考えてみて、
発信してからも必要に応じ見直しを、
されてはいかがでしょうか?