treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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古いThinkPadのCPUスピードにACアダプタとバッテリが影響する話

Windows10環境で古いThinkPadを使っているとCPU速度が遅くて困ることがあります。しかしその原因は電源周りかもしれません、という話をご報告です。

遅いThinkPad X61

この前、ThinkPadをメンテしたときのこと。
<Officeのアンインストールをサポートツールでやってみる - treedown’s Report>
動作が遅くてなかなか調査や対処が難航したのですが、その後日談。

「あのPCね、バッテリ寿命だったでしょ?」

そうですね、バッテリのLEDがオレンジランプで点滅でしたもんね。

「バッテリが寿命来てると、CPUのクロック数(周波数)が低下する、という現象があるようですよ。」

ん?
それって…すっごい昔に公式のサポートページで読んだような…

ACアダプタによって動作が変わる

この話、10年以上前にThinkPad T61を新品で利用していた時代(なので2007年とか2008年のVistaリリース直後)に、ThinkPadの動作が遅くなる現象を調査しているときに発見した情報でした。

さすがに、10年以上前の話なので公式のサポートページではさすがに記述が残っていませんでしたが、記憶の限り記載してみます。(昔メモした紙はあったのでそこから抜粋)

ThinkPadのある世代(TシリーズならT60~T400/500まで、XならX61~X200/X310まで)では、65WのACアダプタを利用するときに電力不足が発生する可能性があるため、バッテリを装着していない場合にはCPUクロック数が低速になるよう設計されている。(設計されている、なので、設定などで解除することは不可能)

該当のThinkPadで65WのACアダプタを利用する場合には、充電された状態のバッテリを本体に装着し、ACアダプタによって電源が供給されている状態でもバッテリが有効でないと、100%の性能を発揮することが出来ない。(CPUの性能が制限された状態で稼働する)

という動きをします。

このため、レノボサイトでは「バッテリを外してThinkPadを利用するのであれば、電力量が十分な90WのACアダプタを利用する」か「65WのACアダプタを利用するのであれば、バッテリがある程度充電されバッテリから電力供給可能な状態で利用する」かのいずれかで性能が100%利用可能となります。

90WのACアダプタで試してみよう

こうして、バッテリが寿命を迎えた(バッテリが給電できない)ThinkPadではバッテリを外して利用していることと同義になることで、CPUの速度は100%発揮されず、リミッターが掛かっている状態にある、ということに気づきます。

それならばと試して見ることにしました。
ちょうど、以前にT60の調子が悪い<ThinkPad T60たまにフリーズの症状を調べてみる - treedown’s Report>現象があったので、ものは試しとアダプタ別に比較してみます。
用意したACアダプタは二つ。

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65Wと90Wの二つを用意しました。そしてバッテリも二つ、エラーで認識しないバッテリと充電可能なバッテリの二種類。※ThinkPad T60のバッテリがまだ生きてるというのはなかなか貴重なのかも、とか一瞬思いました。ちなみに15インチのT61と同一のバッテリ。

まずは65WのACアダプタでOS起動直後。

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確かに、最大速度1.83GHzの表記が見て取れますが、速度は0.99GHzで頭打ちになっています。
しばらく確認しましたが…

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このように、CPUを半分くらいまでは使い切るのですが、そこから上にグラフが伸びることがありませんでした。赤囲みの部分に使用率が伸びていかない。
ふむふむ。では、バッテリを給電可能な(充電放電可能な)正常品と取り替えて、65WのACアダプタで稼働させてみます。
すると、

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速度が1.80GHzに表示が変わり、突然使用率が99%に伸びました。65WのACアダプタであってもバッテリが有効なのであれば、CPUは最大限動ける全力を出してくれるようです。
この状態で90WのACアダプタに差し替えても、速度に変化なし。ちょっと処理が上下してきたのですが、使用率が制限されることがないことは確認出来ました。
この90WのACアダプタを接続した状態から、バッテリをエラー品(充放電不可能なバッテリ)に変更しても速度に変化はありませんでした。

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改めて、バッテリを上手く調整して90WのACアダプタを65WのACアダプタと取り替えて、バッテリもエラー品(充放電不可能なバッテリ)に変更すると…

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元通り、きっちり速度が低下、使用率も再び最高50%台に制限されるようになりました。

これで検証はできました。

バッテリランプとの相関

バッテリが正常時、速度は1.80GHzに表示されているのが確認できました。
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バッテリが正常なら65WのACアダプタでもCPUは最大速度で稼働してくれます。
では、バッテリが死んでいるパターンでも90WのACアダプタなら…

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見づらいですが、バッテリLEDがオレンジ点滅であっても、90WのACアダプタを接続している状況ならCPU速度は1.80GHzと表示されます。使用率も最高100%まで(負荷を掛ければ)稼働します。
しかし、

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バッテリLEDがオレンジ点滅(消灯しているように見えますが、点滅している写真なので消えたところ)の状況で65WのACアダプタを使用している場合には、きっちり速度0.97GHzとリミッターが掛かったような状態になってしまいます。
これでは最大速度で動作することができず、処理速度が落ちるので、Windows10の基本タスクを動作させるにも処理時間の遅延ばかりが発生してしまいます。

つまり、電源は重要

ここまでやってみて改めて実感したのは、バッテリが活きている状態でこそのThinkPadだなぁ、ということでした。
あ、あと、伊達に90WのACアダプタを付属していないんだな、ということも。T60は旧式だけど外部GPU搭載なので、その分の電力をまかなうために最初から90WのACアダプタが付属していました。それが65Wじゃないのには理由があったんだなぁ、ということも実感。

ちなみに、画像は撮っていませんが、給電可能な(充電放電可能な)正常品のバッテリを装着し、ACアダプタを外す=バッテリ駆動で使った場合、速度0.97GHzになっていましたので、「バッテリ稼働でも速度は低下する」ということになります。つまりバッテリのみでもCPUは100%使い切ってくれません。

結論として、以前の<ThinkPad T60たまにフリーズの症状を調べてみる - treedown’s Report>では、結論が出きっていなかったのですが、フリーズの原因はやはり90WのACアダプタを利用していないことによる、処理能力不足、ということなんじゃないかと考えるようになってきました。でも90WのACアダプタを今更買うかというと、やっぱ買わないですよね…。

※ちなみに、複数台所有しているT420sのOptimasモデルは90WのACアダプタが標準なので、それを使うことでなんとかまかなっています。(同時に使えるPC台数は減るけど)