treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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システム管理者はパソコンオタク視点じゃない方がいい

今日はシステム管理者、特にPCの管理やユーザサポートに関わる業務を担当している方向けのご報告内容です。

昔、こういわれたことがあります。
「PCの管理者って、パソコンオタクじゃダメなんですよ。」
む?どうしたの?急に。
「いえね。会社がアサインする人員、といいますか、採用する人、ってPCの担当者=パソコンオタクってケース多くないですか?」
うーん。確かにそういう側面はあるように思えますなぁ。PCに詳しいものね。
PCに詳しいから素人管理者よりいいよね?ってことでアサインされるわけだよね?
「パソコンオタク…まあ自作マニアって言った方がいいかもしれませんけど、向いてないんです。そういう人は。」
PCの担当者だけどパソコンオタクは向いていない?というのはこれいかに?
「パソコンオタクの人って…まあ全部が全部そうじゃないんですけど、PCっていう1台の中にばかり目が行って、"インフラ"というベースで見ないんですよ。全体を見ていないんじゃないか、って。こだわるポイント、そこじゃないだろう、って思っちゃうんですよね。」

例によって何かあったようです。

会話の概要を解説します。

何があったか、というのは置いといて、興味深いのは、
「PCの管理者なのだからPCに対するこだわりというものは持ったほうがいい、持つべき。だがオタク・マニア視点では片手落ち」
という方向性の話になりました。

パソコンはあくまで道具なんです。道具は業務を達成するための要素・パーツの一つなんですけど、道具にしか目が向かない、というのは片手落ち、ということのようです。

でも、PCの管理者としてこだわりというものが何もない、というのは、エンジニア・技術者としてはあまりいい仕事はできない、という側面もあります。エンジニアはある種のこだわりのために知識を収集し腕を磨く(自己研鑽)、という側面もあるからです。

問題は、狭量になるべからず、というところにあるんですね。

何が問題なのか

まず、すべての方がそうだ、というわけではありません。実際そういう事例があったんだ、という前提で聞いてくださいね。
前出のような方ってのはパソコンという道具に目はいきますが、業務に目はいかないことが多い傾向があります。これによって、業務の達成に必要なのはスペックかコストか、という大局を見失うこともありますし、細かい話では些末なスペック差や些末な機能をさも重要なように語るのです。
しかし、それが業務にどう貢献するか、という点についてはあまりうまく説明してくれません。

もちろん、家や友人のPCを整備するときに、自分の知識や技量をいかんなく発揮するパソコンオタク・自作マニア、という心強い味方は未熟なPCユーザにとって神掛かった存在です。何しろ自分の知らないことを次々と解説して、自分の分からない問題を次々と解決してくれるのですから。PCにおいてインシデントという壁にぶつかった際にこんな心強い援軍はいないよね、ということには異論ありません。

ですが、自分のできることの数レベル下くらいまでは世間一般でできるだろうorできるべきという点と、それができないのであればPCを使う資格はない、的なところが多少見受けられる、という一面もあります。つまりこれらのPCにおけるオタク・マニア視点だけでは想像もつかないほどにPCリテラシーの低いユーザに寄り添う、ということはなかなか難しい(やってくれない)ことが多いのです。
インターネット上の掲示板であれば、初心者がしてきた質問に対して、多少難しい説明になったとしても、「初心者がスキルアップ・レベルアップして上級者の解説を理解できるようになるべき」なのは間違いなく正しいのですが、こと会社内においては、「ユーザという初心者がスキルアップ・レベルアップすることを要求する、という考え方は必ずしも正しい構図とならないことが多い」というシチュエーションが見受けられます。
要するに、会社(もっというと経営者)がシステム部門にコストをかけて人員を雇用しているのは、「ユーザ一人一人のITリテラシーが低くても、システム部門の存在によって、その低いITリテラシーをカバーする方法を用意できる」という価値に対してコストをかけている、とも受け取れます。
ユーザ一人一人へITリテラシー教育を施せばかなりのコストを掛けなければならないことが予想されますが、それをシステム部門という部署を用意してそれなりの投資で代替することで、うまく会社の業務とITがマッチして業務が回るようにしている、という考え方もできます。

PCは道具

「人」ベースの話でしたが、PCベースの話に立ち返ると、PCは業務を遂行する道具であり、コピー機も紙と鉛筆もFAXも電話も業務を遂行する道具としては同列です。
ただし、PCは他の道具よりも多機能でいろいろな使い方をできる、という特性があるところが他の道具と異なる点です。紙と鉛筆やFAXに対していちいち専用の担当部署・担当者を設置しませんが、PCに対しては専用の担当者が存在しているのはそういうことだと考えています。(※最近では電話も多機能になってきて、専用の担当が配置されているケースがありますね。)
そう、会社のシステム管理者の一員であるPC管理者も、「PCという道具がどう全体の利益に貢献するのか」という点について深く考えられる人材でなければ本当の意味でシステム管理者とは言えない、冒頭の話ではこのようなことを説いていたのだと解釈できます。
例えば、性能だけの追及ではなく、コストパフォーマンスの追及だったり、PC単体ではそれほど重要な機能ではないがエンタープライズ視点で見ると重要な機能に対しての実装だったり、といった「独裁ではないチームでの社内全体のPCを運用管理する」という視点ですね。
あと、自分の使ったことない技術やあまり知らないことに対して保守的にならず、他のチームメンバが有用な技術の恩恵にあやかれるような横展開ができるか、という点も重要です。(チャレンジングな人材のイメージなのですが、割と自分の知らないことを避ける人も多いですね。)

ただし、これはオタク・マニア的な視点や価値観をすべて否定するという話ではありません。業務に資するPCであっても、ちょっとのスペックにこだわることが正しい局面はありますし、PC単体での機能を考えておけばよい規模感なこともあります。
もうちょっと低レイヤの話をすると、PCを選定するときに、ユーザが気に入るか、ユーザが客先に持っていっても恥ずかしくない道具か、といった視点だって一つの要素です。
重要なのは、トータルでユーザ側業務のことを考慮して貢献できるようなPCの選定・管理・運用ができているか、ということですね。

ぜひとも、システム部門で「胸を張って貢献できている点を説明できる」ようなPC管理者でありたいものです。