1台PCの修復を依頼され持ち込まれることになりました。
親族の自宅PCのボランティア的な依頼なので気楽に納期など時間制限なくお願いします、とのことです。最悪ダメなら諦めて買い直し、ということになっているそうです。
機器
NEC PC-VY17M/ED-2(PC-VY17MED32)
VersaProというシリーズのA4ノートPCです。
OS:Windows Vista Home Basic
症状:
使用中にフリーズしてしまう、という症状。
それほど使用頻度も多くなく、たまに使う程度で、Word/Excelで書類作成とWindows標準のトランプゲーム(ソリティア&フリーセル)をたしなむ程度。
早速調査しました。
- ウィルスチェック⇒問題なし、ウィルス感染はありませんでした。
- Memtest86+⇒問題なし、Pass×3でメモリの異常はないと判断しました。
- HDDチェックツール⇒問題なし、むしろ使用頻度が低いゆえ良好HDDとのこと。
- ブルースクリーンの確認⇒ブルースクリーンが発生した形跡なし(Windowsフォルダ内にMEMORY.DMPの存在なし。
と、このようになにも問題ないのです。
いやいや、そんなわけないよね。なにかもっと根本的な問題があるはず。
エクスプローラを開きます。
Cドライブ:19.5GB/20.0GB 357MBの空き領域
Dドライブ: 5.0GB/13.0GB 7.5GBの空き領域
ん?
「Cドライブ:357MBの空き領域」
これはいかん。
起動直後からインストールされているウィルス対策ソフトがエラーでサービスコケてたからおかしいとは思っていましたが、
VistaのPCでC:\の容量が20GBしか領域確保されていないメーカーPCを初めてみました。
なんというメーカー初期設定だ。
しかも20GBしかないんだからCとDを分けるな。
Windows Vistaの最低スペック要件です。(MSサポートより)
- CPU:800 MHz、32 ビット (x86) ないし64 ビット (x64) のプロセッサ
- メモリ:512 MB のシステム メモリ
- グラフィック1:DirectX 9 相当のグラフィック カード
- グラフィック2:32 MB のグラフィック メモリ
- HDD:15 GB の空き領域がある 20 GB のハード ディスク
うーむ、最低スペックとはいえ、これじゃ満足に動かないです。
CPUはさておき、メモリ:2GBは欲しい、HDDも64GB~80GB程度は欲しいところですね。
一方このPCスペックは…
- CPU: Celeron M 430 1.73GHz
- メモリ:512MB+増設1GB=1.5GB
- HDD:40GB(うちリカバリで7GB消費で33GB利用可能)
⇒内訳は前述のとおり(C:20.0GB、D:13GB)
やはりHDDが泣き所です。特にCドライブの容量が最低スペック要件ギリギリなのでSPはおろかWindowsUpdateすらまともに適用できていない状況です。
いや、40GBでもつらいですよね。正直言って64GBでもVista SP2でアップデート全部適用したら大した使用容量になってしまいます。
ログを追っていくと、WindowsUpdateもアンチウィルスソフトも空き容量不足のためかアップデートができていません。しかも結構前から。
もちろんVistaでは必須と言われているSP2はおろかSP1すらも適用されている気配はありません。この状態でどうやって生き延びてきたのか教えてほしいくらいです。
そして障害の内容ですが、これはフリーズではなかったのではないか?ということも考えられる状況です。
HDDをガリガリ読み込んでいて動かなくなったように見えるだけの現象、という可能性もあります。どちらにしろ300MBの空き容量で動作するほどVistaは甘くありません。しかも安定のSP2を適用していないのですからなおさらです。
CPUもCeleron Mとなりますので、タダでさえシングルコアであれこれタスクが動いていますがちょっとしたことですぐに使用率100%で張り付いてしまいます。(Windows Updateの更新検索などはいい例です。)
まいったなぁ、これどうしよう。
まずはバックアップ取っておきましょうかね。
(以前の小規模な共有フォルダのバックアップなら安価に用意しましょう。 - treedown’s Reportで紹介した)Acronis TrueImageのベンダーエディションのCDブートでUSB接続のHDDにイメージバックアップを取得します。
例えばAcronis TrueImage WD Editionを使う場合、内蔵のHDDがWDでなくても、バックアップ先となるUSB接続のHDDがWDのHDDであればイメージバックアップが可能です。
これで、もし何かあった場合、預かった時の状態に戻せるようになります。
HDDだからバックアップも時間が掛かりましたが容量が少ないのが不幸中の幸いです。バックアップは無事完了しました。
次にServicePackをMicrosoftダウンロードセンターからダウンロードしてUSBメモリに収めます。(SP1とSP2)
最短ルートを目指して、オフラインでSP1適用⇒SP2適用、と最低限の動作条件であるVista ServicePack2となるように適用を実施します。
よく見るとInternet Explorerのバージョンは7です。これも9にアップデートしてしまいましょう。
ウィルス対策ソフトも無料の対策ソフトが使われていましたが、エラーとバージョンが古いこともあってMicrosoft Security Essentialに入れ替えることにしました。
だいたいのウィルス対策ソフト(Internet Securityと冠する製品)はコアプログラムの入れ替えが必要となり、大々的なプログラム更新が年1回か数年に1回程度は動作します。
今回はとても使用頻度が低いPCなので、このコアプログラムの入れ替えの手間も惜しまれる可能性が高いことが考えられますのでMicrosoft Security Essentialのように大幅な更新が発生しないことに加え、WindowsUpdateで更新が自動化されるのはメリットが大きいと思われます。
作業として以下の計画を立てました。
- HDD:空き容量357MB⇒5GB以上確保
- OS:WindowsVista無印⇒SP1⇒SP2⇒WUで最新
- IE:Internet Explorer7⇒Internet Explorer9
- ウィルス対策ソフト:既存⇒MSE
まずは容量確保です。
一番効果的なのはWindowsUpdate履歴を消去するのが効果的です。
(Win2003Serverの時は<C:\Windows>配下に「$NtUninstallKB~」という隠しフォルダがたくさん生成されていました。)
WindowsUpdateの履歴は全部なくなってしまいますが、容量確保のため背に腹は代えられません。(ちなみに履歴が消えても適用されたパッチが消えるわけではないです。)
早速MMCのサービスからWindows Updateサービスを停止します。
<C:\WINDOWS\SoftwareDistribution\DataStore>をDドライブに移動しました。
加えて<C:\WINDOWS\SoftwareDistribution\Download>もDドライブに移動しました。
この時点でCドライブの空き容量が357MB⇒2.5GBまで空き領域が増えました。
PCを再起動して、Cドライブから所定のフォルダがなくなった状態で動作確認をします。
WindowsUpdateを起動して履歴の確認⇒履歴はなくなりまっさらになりました。
WindowsUpdate動作確認⇒更新の確認はできるようになりました。
フォルダは削除しても問題ないと確認できたので、次の手に移ります。
さてさて、2.5GBまで容量が増えたとはいえ、Vista SP1適用条件には、一時領域確保のためHDD空き容量5GBを要するという仕様要件が公開されています。
何かを消して5GB開けるのは限界があります。
そうなるとDドライブの7.5GBの空き領域を使わない手はありません。
パーティション操作ソフトでDの空き容量はそっくりCドライブに頂戴してしまいましょう。
今回はUltimate Boot CDに収録されているParted magicを使ってみることにします。(昔はPartition magicを愛用していました。関係あるのかな。)
CDから起動してしばらく待っていると、LiveCDのごときデスクトップが起動してきます。
ここでPartition Editorを選択し、以下の手順で操作します。
1)Resize/MoveでDドライブの容量削減(Dの前側に空き容量を作る)
2)Resize/MoveでCドライブの容量拡張(空き容量を作成した側へCの容量を拡張する)
3)Applyで操作の反映
⇒ひたすら待つ
操作が反映されたら、Windows Vistaを起動して動作確認です。
CとDの空き容量を合わせて10GBの空き容量を用意できました。
HDD容量節約のためUSBメモリにSP1/SP2のインストーラを用意してUSBメモリから直接実行します。
SP1の適用⇒長い、ひたすら待ちます⇒長い…おそらく1時間以上かかりました、再起動
返す刀でSP2の適用を実行します⇒長い、ひたすら待ちます⇒長い…1時間程度かかりました、再起動
ようやくスタートラインに立った気になります。改めてWindowsUpdateでOSを最新状態までもっていくことにします。
WindowsUpdateも長いことかかります。HDDでかつCPUもCeleronシングルコアではのんびり待つよりほかはありません。
169個のアップデートを完了させたあと、Office2007のServicePack3の適用で、再度WindowsUpdateをすると新たなセキュリティアップデートが表示されます。
根気強くWindowsUpdateを繰り返すうちに、ようやく最新の更新がないところまで漕ぎつけました。
IEは個別にインストールしようと思っていましたが、WindowsUpdateを繰り返すうちにIE9が適用されていました。結果オーライです。
最後にMicrosoft Security Essential(MSE)をインストールします。
インストール前に念のためOnlineScanで再度安全確認を実施します。
MSEインストール後は最新版に更新し、再度フルスキャンを実施し、問題がないことを確認します。
この時点でHDD空き容量が以下のようになってしまいました。
空き容量が2GB程度となりました。
現在のVistaは2017年までが延長サポートフェーズが有効です。あと2年程度はVistaで稼働可能なわけです。(加えてOfficeも2007Personalでした。もう2017年までいっときましょう、と言いたくなる内容です。)ほとんどPCを使わないというライトなユーザであれば、このままVistaであと2年引っ張るのがベストの選択肢と思えます。(別に用途があれば買い替えを検討するのも手なのですが、PCにそれほどの性能を求めていないこのユーザは買い替えて幸せになれるかに疑問符が付きます。)
この2GBの空き容量はあと2年をVistaで乗り切るに多少の不安がある容量に見えました。そこで再度、<C:\WINDOWS\SoftwareDistribution\DataStore>と<C:\WINDOWS\SoftwareDistribution\Download>の2つを(移動後に再起動で動作を確認して)削除することで容量を確保しました。WindowsUpdateの履歴は消えてしまいますが、ユーザにとってWindowsUpdateの履歴がそれほどの価値はないと判断して消してしまいました。
最終的に、これくらいの容量になります。(WU履歴は最終的に1.4GB程度あり、CからDに移動した直後の容量が下図になります。)
ここでDドライブの空き容量も欲しくなってきました。つまり、Dドライブから2GB程度Cドライブに融通することで空き容量は5GB強程度確保できます。5GB空き容量と言えばServicePackの適用要件にあるHDD空き容量です。その程度あれば、2年間はどうにかなるのではないかというのは勝手な憶測ですが、この状況ではCドライブの空き容量は多いに越したことはありません。逆にデータ用として利用されているDドライブは安価なSDカードやUSBメモリで代用することも可能です。(その方が使い勝手もいいように思えます。)
そこで再度パーティション調整をし、最終的にCドライブの空き容量5GB確保し、Dドライブの空き容量は数百MBとしました。(Dの余裕をすべてCに融通したような形になります。)
Dドライブは別の媒体にバックアップをお勧めしようと思います。
初期のVista PCを利用の方の中では、このHDD容量不足の問題を抱えておられる方もいるのではないでしょうか?
特にPCにそれほど手を掛けていない(今回の記事のような)ライトユーザの方で古いPCをライトに使っている方はそれほど使わないからそれほど手間も費用も掛ける必要がないので、考えるところが他のPCユーザに比べて難しくなってしまう、というジレンマ。。。
PCをそれなりに使うユーザ向けであれば、私はSSD換装を真っ先にすすめます。でWindowsも7にリプレイスするとなおよし、です。それなりにPCを使うのであればこの2つの投資は取り返せます。
しかしライトなユーザですと、この投資が良かったと思えるほどPCを使わない、この投資で得られるメリットが享受できる機会は少ない、ということからSSD換装もOSリプレイスもあまりうれしい変化にはならない可能性が高いです。
ひとまずここまででいったん作業を完了させることとします。空き容量確保をしてから、フリーズや動作不良と思えるエラーは発生せずにWindowsUpdateが何回も正常動作⇒正常終了していますので、HDD(Cドライブ)の容量不足がすべての原因だったのかということで、このPCの不具合は解消という結論で終了することにしました。
このあたりで結果報告をしようと思っています。
また新しい依頼に発展しなければいいのですが…。
祈ろう。