サーバ室に突如報告された雨漏り被害。
その正体は?
移動中に考えていたその雨漏りの原因は、それよりもっと昔、90年代に体験した出来事を思い起こさせていた。
やってきた助っ人
「おーい、こないだの…、って、なんじゃぁ、こりゃぁあ!」
目の前に広がる部屋の状況に、刑事ドラマのジーパン刑事のごときリアクションで分かりやすく驚きを伝えてくれた同期は、こう言うと状況を理解することに努めた。
「何?これ?、天井から水が落ちてきているんだけど。…雨漏り?」
次に湧き上がってきたのは笑いだった。
「ブハハハハ、雨漏り!この平成の世の中で、雨漏りなんてするんかい!」
ウケた。いや本意ではないが、むしろ被害を考えると不本意だが、それでもウケたことに対しては、多少「オイシイ」と感じてしまっていた。
重ねて言うが、被害については不本意だ。しかしオイシイと感じてしまった時点で何か得したような不思議な感覚に陥っていた。
同期は言葉を続ける。
「いやぁ、さすがだな、キミは。ハプニングに出会う星の元に生まれているんだな。スゲェーよ、オイシイよ。我々は確かに昭和生まれだが、この平成の世の中において"雨漏りの被害に遭う"なんてなかなかないぜ。」
妙に感心した言葉で慰める同期は、急ぎ天井から落ちる水に濡れる部屋の備品を避難するのを手伝い始めた。
同期の手伝いもあって、とりあえず雨漏りの領域には荷物を置かないよう退避し、水滴の落下点に新聞紙を敷き詰め洗面器やバケツなどで水を受けるよう、一次対処を速やかに完了することができた。
落ち着いた二人。おもむろに
「これ、どうするよ?」
根本的な問題について同期は質問してきた。
どうする…って言ってもなぁ…。
外には激しい雨が降りしきる。雨はなお一層激しさを増し、まだまだ雨は降り続けるように見えた。その雨の強さに比例して、雨漏りが刻むビートも徐々に速くなっているような気がした。
「これは埒が明かない、管理人さんに言っておかないといけないんじゃないかね。」
同期の至極真っ当な提案を受け入れた私は、管理人室へ向かって歩き出していた。
管理人驚愕、そして疑問が
「アラアラ、マアマアマア…。これはヒドイなぁ…。」
ほどなくして中年女性の管理人さんがやってきた。
最初は信じていなかった管理人さんも実際の雨漏りの現場を見ると信じてくれた。
雨漏り、管理人さんにとっても初体験だったよう、興味深く雨漏りの箇所を見ては、洗面器に打ち付ける水滴を観察していた。
「雨漏りって、するもんなんだ。雨、酷いもんね。大雨だし。」
管理人さんは妙に納得したように思ったことが口を突いて出てくるようだった。
ですよねー、などと同期も相槌を打っている。
「ん?でもさ…。」
何かを閃いた管理人さん。
冷静さを失ってた当事者二人は次の言葉に驚く。
「ここ2階でしょ?3階建ての社員寮でなんで2階が雨漏りするわけ?」
…そういやそうだ。
てことは上の階、3階の部屋は阿鼻叫喚の地獄絵図、ってことですかね。
何かを思った管理人さんはさっそくその権限で3階の部屋の鍵を取りにいくことで、疑問を解決しようとした。
3階が水浸しだから2階の私の部屋もこうなってんるんだよな…、たぶん。
そう思いながら、3階の部屋が洪水のように水が溜まっていて水族館のようになっている、そんなドリフのコントのワンシーンを頭の中に思い描いていた。