treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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(3/5)自己評価って難しいよね、という話

現実逃避かの如く、頭の中ではもっと幼い時期である子供のころを思い出していた。

子供の頃

それは子供の頃だった。その家庭ではいわゆるウインタースポーツが盛んで、毎週のようにスキー場に出かけていた。ナイターもあれば日曜の早朝に出掛けて夕方に帰るような日程もある。家から一番近いスキー場に行くこともあれば雪質の違いからより良い雪質のスキー場を求めて県外の広大なスキー場に行くこともある。
とかく雪が降ればウインタースポーツのシーズン、ウインタースポーツのシーズンには毎週のようにスキーに出掛けることが当たり前になっていた。
毎週のように言っていれば当然だが父は子にスキーを教えることになる。
「ナイターって上のゲレンデに行けないからなぁ、教えたるよ。」
そういって父は子にスキーを教えていた。
「まずはボーゲン、だな。ボーゲンができればだいたいのところは滑れるようになるとも。」
「次は斜滑降だ、これができるようになると急な斜面でも対処できるようになる。」
「山側の足と谷側の足がだな・・・。」
こうしてどんどん出される課題をクリアしていくことによって、県外のスキー場に行ったとしても一人で上のゲレンデに行って滑れるようになるまでにそれほど期間は要しなかった。なにせ毎週のようにスキー場に出掛けて一日滑り倒して、それを毎週繰り返して、小学校の毎年冬にはそんな生活していれば別に陸上競技ができなくたってスキーだけは上手になる。

なんとなく、そんな小学校時代の光景が頭に浮かんでは消えていた。

致命的だったのはその子は、普段の陸上競技や球技全般で目立った運動能力が傍目からみて平均以下に見えたこと、これがこの事態を招いているようだった。

説得が続く、しかし…

小学校時代の思い出を頭に巡らせながら現実逃避をしている場合ではない、目の前では体育教師のA先生が説得を続けていた。

「上のレベルではな、ひたすらゲレンデの上の方で滑ることになるんだよ。そんなのについていけるのかね。」

なぜこんなに熱心に説得をするのだか理解に苦しむのだが、予想外のところから横槍が入る。

「先生、この人、スキーはできるんですよ。」

その声の主を見れば、同じ小学校の同級生(同じ学年しかいないんだから同級生なのは当たり前だが)だった。
A先生はその声の主を見やると、その同級生は言葉を重ねた。

スキーは、できるんですよ。だから(この班で)大丈夫です。ホントですって。」

この”ホントですって。”というフレーズが妙に耳に残っている。もう何十年も前の話なのだがこのフレーズだけは昨日聞いたような鮮明さで頭の中でだけ再生できる。ただし言葉の主は誰だったか忘れてしまったのだが。
”ホントですって。”の声の主が私の擁護をしているような格好になっているのだが、彼が私の擁護をしても別に彼には利も無ければ害もない。同じ小学校だったというだけで特別仲良くしていたわけでもない、あくまでも同じ小学校の同級生、その域を出ない仲だったのだが、彼ははっきりと私のスキーの技量について肯定し体育教師のA先生に対してその技量を保証しているように聞こえた。
A先生は思わぬところからの援護射撃に少々面食らった様子だが、意に介さず私を説得を続けることを選んだ。

「上のレベルはな、大変だぞ。悪いことはいわないから、いまならまだ班を変えることができる。」

ただ、同級生からの援護射撃の影響か、心なしか説得の言葉は否定から懐柔へと変化が見られた。A先生はさらに言葉を続けようとする。
そこにはA先生における体育教師としての、なにか強い意志、固い決意のようなものを感じた。
だが次に口をついて出てきた言葉はそれほど崇高な発言ではなかった。

「ついうっかりできるってことにしちゃったんだろう?」

うーん、ここまで熱心に説得されるとさすがにめんどくさくなってくる。
そしてトドメの
”ついうっかりできるってことにしちゃったんだろう?”
とくれば、もう私は完全に疑惑の2班所属ということになってしまう。たかがスキー合宿で大ボラ吹いているような錯覚をし始めていた。
スキー合宿先であるスキー場は毎週のように行っていたスキー場だし、そもそも、だ。
”ひたすらゲレンデの上の方で滑ることになる”などと言われても、小学校の時から既にそのように一日中ひたすらゲレンデの上の方で滑り続けるようなことは数えきれんほどやっている。
別にそれについて自信がないわけじゃないし、
スキーの技術面でもなんの不安もないのだが、

ただ、目の前の大人を説得する自信だけはなかった。

自信はないが、この場をどう収めるのか、決断が必要とされていた。

そして、いや、待てよ…。もしかして私は自分ではできると思っていただけで、実はそれほどできないんじゃないだろうか?そんな気もしていた。