「計画は変更です。」
唐突にレイアウト変更の際の配線計画について、担当者の一人が変更だと主張してくる。
???
数週間も練ってきた計画だったのですが、いったいどうしたんだろう。ワケを聞いてみようと試みる。
ワケアリのその理由は数時間前に担当者が受けた電話にあった。
その電話とは
電話の主は営業部の部長。部長は午後の昼下がり、おもむろに電話を掛けてきてこういったそうな。
営「電話の親機が営業の島、私の目の前に必要だ。」
レイアウトの都合で電話配線を営業部員数名が座る机の集団(以下「島」と呼ぶ)に配線するには少々コストが必要になるため、ここの配線は検討の末、どうせ人数も少ないし同時通話は二通話のISDN回線なんだから親機1台を電話線のあるところに設置して、子機を二台だけ島に配備すれば足りるよね、ということで合意を得ていたはずだった。
その営業所はちょっと広いワンルームマンションの一室、といったくらいの小さい営業所でそれほどレイアウトに大きな費用を掛けられるわけでもない。島も営業×一島にその他の部署×一島の合計二島で十名に満たない規模の営業所、とくればやはりそれほどの規模感ではないように思えた。
子機は三台あったので、営業島二台にその他部署で一台の割り振りだった。営業部員が全員外出していればその他部署が代わりに電話を取ることになる、そのために一台はその他部署に割り当てる、という方向で進んでいた。
しかし、これが、作業日の三日前である、いま、突然物言いがついた。
物言いを付けた営業部長。この営業部長の主張は電話の親機が営業部島に設置されていないなんてありえない、ということらしい。
当然担当は反論する。
担当「えぇっ?でも子機は二台とも五人掛けの島(机)に設置されているんですよ。だいたい、子機と親機に電話としての差なんてないんですから。さらに営業マン全員一人一台会社携帯も貸与されてるでしょう?」
担当者としては親機にこだわる理由が分からない。同じ機能の子機も複数あるし、会社貸与の携帯電話も一人一台使える環境にある部署なのだから、親機が目の前に設置されることの必然性が必要だった。
これに対して、営業部長は反論を開始した。
営「いや、私はいままで電話の親機なしで仕事をしたことがない。私が入社するときにも私には専用の電話を用意するよう社長からの了承を得て入社しているのだよ。」
担当「…あの、言ってる意味がよく分かりませんが」
反論はそれほど意味がなかったようだ。そもそも何を言っているか担当には理解ができなかったようだ。
営業部長としては、自分の島に電話の子機だけしか置かれていない、ということにプライドの問題を感じ取ったんだろう、という推測で話は落ち着いた。
営「とにかく親機が目の前にないと、気分が乗らない。気持ちの問題だ。」
と、こういうことを言うわけだが、担当としてはどうしても素直に「はいそうですか。」とは言えない。担当の頭の中では
「それは配線してまでも親機を島に設置したほうがいいですね。」という合理的な理由がどうしても欲しい。そうでなければやる意味が見いだせないからだ。
しかし、そんな気など知ったことではない営業側としては自身の主張を譲ることはできないようだった。
電話でごねること15分…
話てもらちが明かないということで結局のところ担当はあきらめたようだ。
担当「ただし三日後のレイアウト変更にはできないですよ。今突然言われたことなんですから、配線もモールも別途調達しなきゃいけないんです。」
しかし、営業側としての主張は"目の前に親機があること"だったようで、時間が掛かってもよかったらしい。
営「…いいだろう。」
と、後日の対処になることを条件として飲むことで、トレードオフにしたようにも見えた。
こうして、この件は後日の対処ということで話はまとまった。
と、このように遭遇した出来事について、熱っぽく、しかし冷静に語った最後に、担当の彼は私にこう言い放つ。
「そもそもね、あの部署の連中、固定電話なんか使っていないんです。」
それを聞いた私には衝撃が走った。
続きます。