treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

システム部門に変な指示が下った昔話

今日は、昔話のご報告です。
なんのためにもならない可能性が高い、毒にも薬にもならぬ記事の可能性が高い、ですがこんな一幕も世の中のシステム管理者にはあるんだな、という一つの事象として聞いてください。あなたならどうします?

その電話は午後の昼下がり、システム部門長に内線が掛かってきた。
「ん?、あ、はい?えぇぇっ?なんでですか?いや、そういわれましても…。」
部門長が明らかに動揺と狼狽してるのが伝わってくる。何かゴニョゴニョ言っているのだが、途中からあからさまなまでのうまく聞き取れないくらいの声のボリュームをMIN.に抑えめ。
数分のゴニョゴニョが終わり、電話を切った部門長がまっすぐ私を見てこういう。
「ちょっと来てくれるか?」
私は、はい、と返事して黙って後についていくことに。
場所はサーバ室、部門長が開錠するよう促す。私はそっと鍵を差し開錠すると、エアコンの音とサーバファンの音が充満するサーバ室に2人で入ることになった。
部門長がサーバ室内の椅子に腰かけると、おもむろに口火を切る。
「今の電話、何かわかる?」
上目使いでバツが悪そうに切り出した部門長はハッとしたように気づいて、私にも椅子を勧めてきた。話が長くなる、ということを暗に示しているようだった。
椅子に腰かけた私は、小首をかしげ、
「何でしょうね。また何か無理難題を指示されたんですか。」
と多少他人事に思って返事をしていた。

正直、侮っていた。

眉間にしわを寄せた部門長は電話の内容を説明し始めることになった。
「いや、今の電話、常務からだったんやけど…。」
どんな会話だったんでしょうか?ざっくり概要を。
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何を言われたかというと、電話の開口一番、
「サーバ室でコソコソ何やってるんだオマエラは。」
と言われたそうなのです。
いや、サーバ室でやるとしたらサーバの操作とかメンテナンスとか、システムの業務ですよ。当然ですよね?他に何をやるんでしょうか。
当然部門長もこう説明したそうです。何をやるかと言えばサーバの操作です。
ですが、そんな説明は耳に届きません。
「サーバ室に入るなよ!分かったか!!」
と厳しい口調で言われたそうです。
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これを聞いた私はギョッとした。
サーバ室に入っているのは主に担当者である私と私の後輩のインフラ管理担当者2名。当時はWindows NT4.0 Serverがまだメインで使われている時代。当然リモートデスクトップは使えないので、PCAnywareといリモート操作ソフトを使用してデスクトップのリモート操作を実施していた、という記憶が懐かしい時代。
こんなインフラでは、やはりサーバ室に行ってサーバコンソールから直接操作を実施したほうが(近いんだし)効率的なので、必要な操作はサーバ室に行って実施することで日々の業務をこなす。

で、それを禁止する、と仰っているわけだ。

何かを疑われているんじゃないか?という点はすぐに察することができた。
とはいえ特に会社の不利益になるようなことは何もしていないし、サーバ室に籠ったからってなにかできるわけでもない。当時の自分からすれば、何を疑って掛かっているのかさっぱりな状態。

ここまでの思考は0.?秒で頭の中を駆け巡ったとして、反射的にこんなセリフが私の口をついて出てくる。
「えぇっ?じゃあ、業務遂行不可、という業務が結構ありますよ。どうしましょう…?」
当時のインフラでは、ユーザ作成、削除やアクセス権編集はリモートサーバ管理ツールを使えばネットワーク経由でどうにかできるが、共有フォルダの作成やアクセス権設定といった操作はどうしてもサーバコンソールでの操作が必要、WindowsNT4.0ですから。リモートデスクトップありませんから。あとファイアウォールの設定(穴あけ)もセキュリティの関係でネットワーク経由では不可、となっているのですな。これも影響ありです。
ざっくりこんな影響がある、という主旨の説明をしたところで、部門長の判断を仰ぐ。
どうしましょうか、と。
ため息交じりに部門長が説明する。
「言うたよ。それ。アチラ側も業務遂行不可、というのは都合が悪いみたいやね。」
一旦、呼吸を整えるためか数秒間が空いた。
「で、な。返ってきた折衷案が"今後は経営部の誰かを同伴しなければサーバ室への入室を許可しない。"だと。要するに何をするにしても経営部に電話してサーバ室に一緒に入ってもらわないとサーバ室の入室はしてはいけない、ということだ。」
経営部というのは最近新設された部署、いや正確には新設される予定で話が進んでいる部署という方が正しい。役割として会社の意識改革と収益改善のために新設されたプロジェクトの企画、指揮、加えてPMOの機能を有する部署。
当時は社内で何かするときは必ずこの部署に根回し(承認ではない)をしなければ話が進まないという何かとアンタッチャブルな部署とされていた。
部門長の言はさらに続く。
「アチラの主張は、そうそう細かいことで呼び出されても迷惑だから、できるだけ業務をまとめて必要最小限でサーバ室の出入りを済ませるように、とか言うてたわ。まあどうしても入らないといけないような用事が2・3件溜まったところで立会い、くらいの感覚かな。」
部門長の言はもう止まらない。
「作業もサーバ室にきてサーバの目の前で実施するような作業は控えたほうがエエよ。大っぴらに指示できるわけじゃないけどサーバ室に籠ってガッツリやってたような作業あるじゃない?それはやらなくていい、と受け取ってエエよ。当然だけど社内システムのプロジェクトもやらなくていい…というかこれじゃあできんよな。」
マ、マジか…。
正直ここまで聞いて唖然とすると同時に、何か会社内で不穏なことになっているんだろうな、ということは察した。派閥闘争というか政治的な何か、だ。当時の私は数年目の駆け出し社員、といったところだからそこまでは察することはできても、会社の中心にある情報が掴める立場ではない。察するまでで裏が取れないのは残念だがやむを得ない。テレビドラマのベテラン刑事も「正しいことをしたければエラくなれ。」と言っている。そう私はエラくナイ。

事例:パソコンを取りに行く
一部のパソコンはサーバ室の棚に保管されていた(施錠キャビネット不足のため)、これを取りに行く。
まず内線電話でアポイント。
私「サーバ室の立会いをお願いしたいのですが。」
「はい、用件はなに?」
私「サーバ室で保管してあるパソコンを取りに行きます。」
「では○分後の○時○分に、サーバ室前で待ち合わせで。」
(当然私は目下なので先に行って待ってます。)
-------待ち合わせして中に入る。
私「始めてよろしいですか?」
「どうぞ」
私は棚を開け移動するPCを探す。移動するPCのシリアル番号/固定資産番号を控え移動記録を残す。
私「終わりました。これを持ち出します。」
移動するPCと付属品(ACアダプタなど)を提示。立会い人はそれをざっと見て、ノーリアクションのまま退出を促す。
「それでは退出します。鍵を掛けてください。」
2名、部屋から退出。
私「鍵を閉めます。(ガチャっと)締めました。」
「はい、お疲れ様でした。」

これ、なんか意味あるの?

このようにPCやメディアをサーバ室から持ち出すだけならまだマシなんだが、サーバ操作となると、そうもいかない。
当時エアコンが18℃設定だったサーバ室の極寒地獄が立会いの人を襲う。
「まだ?まだ終わらないの?凍えてきたんだけど。」
私…無言。サーバ操作のため集中している。
「もう、凍死する。早く終わらない?」

作業中、ずーっとこんなこと言われたら、集中できんわ。

この時の作業はセキュリティ対策とアップデートだったんですが、結局立会い側が寒いから無理ということになって結局作業は出来ずじまい、未完に終わった。
昔はaptもなかったし、社内のルールで(Solarisが多かったので)make installが推奨、で、私はなし崩し的にUNIX担当者から無理やり引継ぎされて数か月という低スキル状態、とくればですね、
そうそう簡単にサクサク終わるようなものではなかったです。
でも立ち合いは必須、これは変わることはなかった。

正直な感想。
うわぁ、ドン詰まりだぁ。

あの指示を思い出す。
”大っぴらに指示できるわけじゃないけど(略)それはやらなくていい、と受け取ってエエよ。”
…。
"それはやらなくていい、と受け取ってエエよ。"

仕方ない。
やらなくていいか。それより優先されるべき何かがある、ということなのだ。


しかし、こんなドン詰まり状態も長くはなかった。
ある日、何か意を決した様子の部門長が全員を集めて急遽ミーティング。

なんかいい話じゃないよなぁ、絶対ゲンナリする話だ。
そんなメンバーの気を知ってか知らずか、部門長はさわやかにこういった。

「えぇ~。システム部門は解体され、部署としては無くなります。」

え?部署なくなるの?

部門長は、ニヤニヤ笑みを浮かべながら皮肉たっぷりにこうもらした。


「ホンマかどうか知らんけど、もう寒いのイヤなんだってよ。」

あぁ~、そこ。