treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

※https化しました。その影響でしばらくリンク切れなどがあるかもしれませんが徐々に修正していきます。 リンク切れなどのお気づきの点がございましたらコメントなどでご指摘いただけますと助かります。

怠惰な有能が最高で勤勉な無能が最悪という話

昔、ミーティングで自分の視点を変えさせられた説明を受けました。
今日は新しい視点として、この時の内容をご報告します。

ある日のミーティング、突如部長がこんなことを説明し始めました。
社内の人種は以下の4種類に分類することができます。
(1) 怠惰で有能な人
(2) 勤勉で有能な人
(3) 怠惰な無能な人
(4) 勤勉な無能な人

一番最上は「怠惰で有能」、一番最低が「勤勉で無能」、タチが悪い(ことがある)のは「勤勉で有能」だ、というのがミーティングでの説明です。
簡単にグラフにするとこうです。(下図)

f:id:treedown:20151006012018p:plain



当時善良な一会社員だった私は衝撃を受けた一方、なるほどな、と思った説明が続きました。

説明はこうです。
「(1)怠惰で有能な人」が最上な理由は、有能な上に怠惰な社員は仕事をしたくないことが相乗効果をもたらし、必要最低限の仕事で最大の効果を上げるような方法を考えることで、周囲の仕事量も減り良い結果をもたらす。
「(2)勤勉で有能な人」が次点なのは、勤勉な社員は(やらなくていいこともやることで)仕事を増やす傾向にあり、それによって本人だけでなく周囲の仕事量が必然的に増加する傾向にあるからだが、それを差し引いても有能であることには価値がある。(ただし有能ゆえの頭の良さが仇となりタチが悪いこともある。とのこと。)
「(3)怠惰な無能な人」が最低ではない理由は何の役にも立たなければ何の害もない、つまりプラスマイナスゼロだから、というのが大きな理由。つまり相対的評価として毒にも薬にもならないが、マシということ。
「(4)勤勉な無能な人」が最低な理由は、無能のくせに勤勉であるが故に仕事を増やす、さらに無能が拍車を掛けてやらなくていいこと/やっても意味のない仕事を周りに吹聴しとっ散らかすことによって周りの被害となる。マイナス以外の何物でもない。
と、こんな説明が繰り広げられたのです。
私を指さして
「キミは勤勉側の人だからな、注意したほうがいいぞ(ニヤリ)」
と言われたのはWの衝撃(うぉっとっと)でした。

言われた私のほうは「いやっ・・・」と気の利いたリアクションを試みましたが、あまり否定もできず二の句は告げられなかった記憶があります。

多少の偏りはあるかもしれませんが、この説明の意図するところは、
勤勉であるが故にやるべき論だけでやらなくていい仕事までを仕事の範囲としてしまう、そしてそのやるべき論を周囲にも蔓延させることで組織全体の仕事の負担を増やしてしまう、という人種を差して"勤勉"と表現しているようです。
怠惰はとりあえず仕事を最低限しかしない、という人を差して怠惰、と表現しているようです。怠惰にも幅があって給料ドロボーみたいな怠惰からギリギリ仕事が成立している怠惰もいれば、最低限の手数で仕事をサッサと終わらせて常に定時で退社するような人も全部ひっくるめて"怠惰"と表現しているようです。
通常であれば勤勉はプラスイメージ、怠惰はマイナスイメージですが、この部長の説明では全く逆のイメージで単語が使われています。(この前提条件にご注意ください。)
で、この怠惰の幅を表現するために、有能~無能のX軸指標があるそうです。
給料ドロボーみたいな怠惰がX軸のマイナス(限りなく左へのマイナス)ギリギリ仕事が成立している怠惰であればX軸の真ん中くらいの怠惰、最低限の手数で仕事をサッサと終わらせて常に定時で退社するような人がX軸のプラス=有能側に振れる怠惰、といった具合です。
勤勉指標も同様です。勤勉~怠惰までの指標がY軸で表現されていますが、勤勉が必ずしも良い指標ではなく、怠惰が必ずしも悪くはない、というのが特徴です。
怠惰過ぎてもよくはありませんし、勤勉すぎるのも決して良くはないというのがこのミーティングでの説明の主旨です。

何の前触れもなくこのような話を全員に説明しだしたのは、かなり鬱積した"何か"があったことと想像します。ここで言うところの勤勉で無能と表現される社員から迷惑被る出来事があったようです。で、部員に勤勉で無能な社員にはなるんじゃない、と言いたかったとか。

ここからは私なりの解釈となりますが、勤勉であることはある程度は必要なのですが、度を超すと周囲にもそれを強要しがちになってしまいます。以前のエントリで「セキュリティ担当者の本当の仕事 - treedown’s Report」という記事でちらと話に出ましたが、
"セキュリティ担当者がセキュリティ技術によって保護に走るあまり、ユーザの不便を顧みずセキュリティに執着してしまう"
という現象も似たようなものです。
やるべき論で考えれば、やったほうがいい、というのは間違いないのですが、それをやることによってトレードオフになる不便や手間も考慮するべき、というのが物事を極端にしないためのバランス、というものです。
やりすぎは禁物ということですね。
セキュリティの話でいえば、不便や手間に加えコストも侮れません。
勤勉の強要もある種"人の手間を人件費と考える"ことによって無用なコストを掛けてしまう、という言い方もできます。
本当にやる必要があるのかどうか、という部分を熟慮して物事を進めましょうね、という教訓ですね。
個人的には怠惰であることにあまりいい印象はありませんが、勤勉も度を越せば迷惑になり得る、という部分が新鮮な訓告でした。
怠惰でも勤勉でも、度を超すのにブレーキを掛けるのが、有能という一つのスキルです。

是非本記事をお読みの方は有能側にシフトできるよう、様々な視点から思考を鍛えられることを祈っております。